【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み25】ニューノーマル時代におけるサービスクオリティ 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 顧客の安全を守ることは、スタッフの安全確保にも繋がる取り組みと言えます。弊社のアンケート調査の結果(以下「弊社調べ」と言う。)を見ると、顧客は、不安を抱きつつも、しっかりとしたおもてなしや美味しい料理、温泉等を期待していました。これまで、チェックイン、チェックアウト等といった限られた範囲であった接遇場面が、今後は健康確認、同意書のやり取り、安全行動に関する説明等、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に関連した顧客接点が大幅に増えます。新型コロナウイルス感染症対策も、顧客に寄り添い、誠実に行うことで、顧客との間の強力な信頼関係構築に繋がることにもなるはずです。

 実施する感染症対策の内容については、顧客に対して予約時、あるいは自社ホームページにて正確で詳細な情報提供が望まれます。弊社調べでは、感染症拡大防止対策の取り組みについて、自社ホームページにて、取り組み内容の写真及び説明文章の掲載が重要であるとの結果でした。また、同様に弊社調べによりますと、充実した顧客に寄り添うサービスの提供と感染症拡大防止対策の実践を両立することで、「同施設に頻繁に行きたいと思う」との回答割合が大幅に上昇していました。そもそも安全性及び安心感が宿泊施設にとって重要な品質であること、また、感染症拡大防止対策の実践が、安全性及び安心感に影響するものであることから、それら両立による相乗効果及び顧客との信頼関係構築の強化が期待されるのです。さらに、新型コロナウイルス感染症が「終息」したとしても、継続して消毒等の感染症対策等の実践、継続を求める声が多いという結果でした。

 以下では、これまで全国の感染症拡大防止対策上弊会が確認した取組事例の中で、顧客に寄り添った新型コロナウイルス感染症対策の実践を紹介します。

 ▽レストランでマスクを外す際に、そっとマスクをカバーする布等を提供する。▽エレベーターボタンを押す時など、手ではなく鍵が使用できるよう工夫する、あるいは、エレベーターのボタンを顧客が押さなくともよいように、スタッフがサポートする。▽チェックイン時、あるいはチェックアウト時における顧客とのやり取りでは、フロントスタッフ、帳場スタッフは、自身の手指をアルコール消毒することで、手袋を着用せず接遇する。▽マスクを使用していても、「笑声」をしっかりと伝える。▽直接スリッパを使用するのではなく、別途、スリッパと同時に着用する靴下を提供する。▽昼間における心理的時間の進行スピードが遅くなっており(弊会調べでは10秒が心理的には約11秒に感じられる。)、朝食の待ち時間、エレベーターの待ち時間、チェックインやアウト時の待ち時間等実際の時間経過と比較し長く感じさせてしまう傾向があることに留意し、ストレスを与えない迅速なサービス提供を行う。▽支払い料金(現金、カード等)のやり取りでは、手渡しではなくトレイを徹底して使用する。

 今後是非とも、自社施設に関するSWOT分析(※S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威別にマトリクス上で視覚化して整理し目的に応じて検討・分析を行うこと。)を行い、感染症対策上の「弱み」があれば、自社施設が有する「強み」でそれを補えないかを検討することも重要な運営視点となるはずです。上記の通り、顧客にとって感染症拡大防止対策は、宿泊施設のサービスクオリティの根幹である安全・安心をさらに強化する取り組みである点をご理解いただき、積極的に感染症拡大防止対策の構築に取り組む必要があると考えられます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史


北村氏

 
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