【ニューノーマル 新常態の観光戦略5】GoToトラベル終了後の風景 元旅行読売出版社社長兼編集長 神崎公一


 Go Toトラベルキャンペーンが迷走している。昨年7月末のキャンペーン開始以来、大きな需要喚起があったが、「山高ければ、谷深し」とのたとえもある。2021年6月末とされる同キャンペーン終了後に反動減はあり得るのか、それとも一度訪れた人たちがリピーターになってくれるのか。

 「お得感に誘われ来られたお客さまは、キャンペーンが終われば足が遠のくと織り込んでおくべきでしょう。本当の旅好きとは客層が異なります」。長年、観光に従事してきた関東圏の関係者はこう分析する。ここで挙げた「旅好きのお客さま」とは、20年春に緊急事態宣言が発せられた際もこっそりひいきの宿を訪れ、励ましてくれるような常連客を指すという。

 長引くデフレ経済の影響で「安価」はキーワードになっている。そこにマッチしたのがGo Toトラベルだ。しかも安かろう、悪かろうではなく、補助金を活用することで安心して、安価に旅が楽しめる魅力がある。

 筆者が講演をする際、「賢くお得に旅をする方法」は関心の高いテーマだ。節約した分で、うまい料理が追加できますよ、などと話すと、舟をこいでいた人たちがメモを取り始める。旅でも「お得」は重要なファクターだ。

 しかし、低価格を前面に打ち出すことの危険性をJTBハワイの社長を務めた流通経済大学の辻野啓一教授がこう指摘する。「安売りをするのが最も簡単なのだが、必ずしっぺ返しが来る。その意味で、ハワイ州政府観光局がKPI(重要業績評価指標)を取り扱い人数から取り扱い額に軸足を移したことは注目に値する」。

 その戦略を裏付けるようなデータがある。JTB総合研究所の海外旅行実態調査の「デスティネーション別旅行先を決めたきっかけ(2018年)」では、「旅行代金が安かったから」が最も低いのがハワイで5.0%、平均の16.1%を大きく下回る。

 半面、ハワイを選んだ理由としては、「家族・友人からのすすめ」が34.2%と平均の28.2%を上回る。ハワイを訪れた旅行者の満足度が高いことを示すものだ。辻野教授は「ハワイのすばらしさを知人、友人らに伝えている光景が浮かぶ。お金ではない魅力を感じてもらいリピーターになり、自分以外の知り合いにも薦めるようだ」。

 観光関係者には、Go Toトラベル終了後を危惧する声が強い。その際、必死の経営努力で少しでも安価を訴求する選択肢もあるだろう。その一方で、違う手法もある。

 37カ所で宿泊施設を展開する休暇村協会は、Go Toトラベル終了を見越し「質の高いサービス、具体的には食の充実をアピールし、常連客も、Go Toで新規においでいただいた方のいずれにも引き続き利用していただけるよう努めたい」と明かす。多様な集客手法が繰り広げられることが、日本の旅の活性化につながる。

 (日本旅行作家協会評議員、元旅行読売出版社社長兼編集長)

 
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