【データ】コロナ禍の心理相談データ


 ティーペックは10日、コロナ禍の心理相談データを公開した。

2020年から続くコロナ禍。新しい生活様式が取り入れられているものの、最近では変異型ウイルスの感染が拡大するなど、先の見通しを持つことが難しい状況に未だ不安やストレスを感じる方も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスが感染拡大する中、ティーペックの電話・Webによるメンタルヘルス相談では「死にたい」などの自傷他害をほのめかす相談※が増加し、2020年は前年比最大1.7倍に増加しました。(https://t-pec.jp/work-work/article/198

本記事の前半では、コロナ禍2年目の2021年におけるティーペックの電話・Webによるメンタルヘルス相談のうち、自傷他害をほのめかす相談が占める割合(以下、自傷他害相談の割合)の推移と実際に相談を受けている心理カウンセラーの所感をご紹介します。

また、後半ではWithコロナ時代の「健康経営」を考える上で、組織に求められる従業員のメンタルヘルスケアのポイントもご紹介します。

※「自傷他害をほのめかす相談」について
ティーペックに寄せられた電話・Webによるメンタルヘルス相談から、「死にたい」「自分を傷つけたい」「リストカットをしたい」「過量服薬したい」などの自傷に関する相談、「誰かを傷つけたい」「虐待してしまいそう」などの他害に関する相談です。

コロナ禍前とコロナ禍中で比較した自傷他害相談の割合の推移について ティーペックへの自傷他害相談の割合は、2020年からは減少傾向がみられる。

(図1)月別の2019年(コロナ禍前)と2020、2021年(コロナ禍中)のティーペックへの心理相談に対する自傷他害相談の割合

コロナ禍前(2019年)とコロナ禍中(2020、2021年)で自傷他害相談の割合を比較すると、月別では図1のような結果となりました。年間の平均では、コロナ禍前の2019年は1.29%でしたが、コロナ禍中となる2020年には割合1.49%と増加傾向がみられました。2021年は引き続きコロナ禍中であるものの1.34%となり、2020年と比較し減少傾向、コロナ禍前と近い水準の割合になっています。

これらの傾向は、未知のウイルスの実態が徐々に分かってきたことやワクチン接種が進み、感染者数が抑えられたことで社会全体の不安感が減少したことなどが遠因になっていると考えられます。

コロナ禍中の自傷他害相談の割合の推移について 2021年の夏に一時的な改善がみられたが、その後は増加傾向に転じている

(図2)2020年~2021年のティーペック自傷他害相談割合と全国感染者数の推移
※全国感染者数は厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」オープンデータを参照https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html

2021年を時期別にみた自傷他害相談の傾向とその要因についての考察

コロナ禍中(2020年~2021年)の自傷他害相談の割合の推移をみると、最も数値が高かったのは2020年9月で1.83%でした。これは長引く自粛生活に加え、芸能人の自死に影響を受けていると思われるケースも多数みられた時期です。この時期と比較すると、2021年の初めには自傷他害をほのめかす相談の割合は減少しましたが、2021年6月までは約1.40%以上で推移していました。

2021年3月頃の第4波到来(3回目の緊急事態宣言発出)の頃から再び上昇傾向がみられました。この時期は新型コロナウイルスの感染拡大とともに、外出自粛要請の影響で企業の倒産、廃業が全国的に相次ぎ、従業員の解雇や雇い止めが深刻化していることがメディアで大きく報じられた時期でした。勤務先や勤務先の所属する業界に対しての先行きを悲観する相談が散見された他、ご自身あるいは配偶者の勤務先が経営難のために解雇や雇い止めに遭い、生活苦から強い希死念慮を訴える相談もありました。

2021年5月~7月頃は減少傾向となりました。この時期には、日本でもワクチン接種が本格化し、先行きの見えないコロナ禍に希望の兆しが見出されたことなどが要因として考えられます。なお、2021年7月における日本国内の自殺者数は、13か月ぶりに前年比減となったことを警察庁が発表しています(「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」厚生労働省自殺対策推進室20220210https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsu_year.html )。この時期の相談内容としては、精神的な不調に関するものや健康状態に関するもの、職場や家庭に関する相談についてなど、コロナ禍以前にみられていた相談内容がほとんどでした。

2021年8月からは再び増加傾向となりました。この増加には、第5波到来(4回目の緊急事態宣言発出)の頃から過去最大規模の感染拡大が始まったことが要因として考えられます。2021年5月~6月には新規感染者数が抑えられていたものの、7月には顕著に増加しました。また、11月には、現在猛威を振るっている変異型のオミクロン株が出現し、再度、未知のウイルスに立ち向かわなくてはならないことに対する不安の声が多く聞かれました。さらに、新型コロナウイルスとの戦いが一進一退を繰り返し、長期化するコロナ禍において、相談者からは「ずっと我慢してきたが、気持ちが切れてしまった。もう疲れた」といった言葉が語られることも多く経験しました。

2021年を通年でみた自傷他害相談の傾向とその要因についての考察

2021年の自傷他害相談の傾向としては、コロナ禍による不況での雇用の不安定化、長く続くコロナ禍で先の見通しが持てないことによる長期的な不安の蓄積、その中で心身共に疲弊し、元々抱えていた精神的な不調が悪化したことが自傷他害をほのめかす相談に繋がっていると考えられます。

【コロナ禍におけるメンタルヘルスの問題と向き合うために知っておいて欲しいポイント】

もし、「死にたい」など自身を傷つけたい気持ちを従業員より相談されたらどうすればよいか?

速やかに、医療機関への受診や、心理カウンセラーなどの専門家への相談を勧めましょう。

コロナ禍において、従業員から「死にたい気持ちがある」「自身を傷つけたい気持ちがある」のような相談をされることは、経営者や管理監督者として決して他人事ではありません。職場内で自傷や他害による危機的な状況が生じた場合、自傷他害の行動を起こした従業員本人はもちろんのこと、周囲の従業員に与える影響や生じる精神的なストレスは非常に強いものとなります。さらに、最悪の状況によっては従業員の家族への対応や警察への対応なども発生し、多くの時間を割かれることになります。そのようなリスクを未然に防ぐことができるように、職場内においてはラインケアの徹底を図ることが重要です。

企業に求められる従業員のメンタルヘルスケアのポイント

(1)管理監督者は、普段から部下の言動、人間関係、職場環境に気を配り、詳細を把握することが重要です。
(2)適切な状況の把握のためには、部下の生活環境にも気を配る必要があります。特に、テレワークをしている部下が一人暮らしである場合には注意が必要です。
(3)遅刻や早退が増えた、無断欠勤する、仕事の効率と成果が上がらない、服装が乱れているなど、いつもと違う変化に意識的に目を向けるようにして、気になったことがあれば声かけをしましょう。
(4)部下の話を聞く機会を設け、話を傾聴しましょう。部下のおかれている状況が深刻であれば、本人の同意を得た上で、管理監督者から産業医などの産業保健スタッフに相談しましょう。
(5)職場内の人間関係や業務内容から部下がメンタルヘルスの不調を生じている場合、管理監督者に相談することを躊躇する従業員もいます。必要に応じて外部の相談窓口への相談も勧めましょう。

Withコロナ時代を心身ともに健康に過ごすために感染を防止する取り組みに加えて、こころの健康を保つ環境も整えていきましょう。

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※健康・医療の相談などは受付けておりません。
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※お問い合わせ内容により、お応えできない場合がございますので、予めご了承ください。

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出典・参照

・厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について オープンデータ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html

・厚生労働省「自殺の統計:各年の状況 警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsu_year.html

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※当記事は2022年3月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 


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