【データ】「地場産業・伝統産業品への意識についての調査」 JTB総合研究所 調べ


 外国人が日常生活に日本の伝統産業品を上手に取り込み、その結果、各地域では伝統の技術を生かしつつ現代の志向に合った商品もつくられるようになった。日本人にとっても日本の伝統産業品を見直すきっかけになっている。一方、工場や工房などで職人との交流やものづくりの現場を見学できるイベント「オープンファクトリー」も広がりつつある。こういった動きを踏まえJTB総合研究所は、「地場産業・伝統産業品への意識についての調査」をまとめた。

 調査対象は、過去1年以内に1回以上、国内旅行へ出かけた経験がある、全国に居住する20~79歳の男女(地場産業・伝統産業品に全く関心がない人は除く、スクリーニング1万人、本調査1595人)。インターネットアンケートで1月10~17日に実施した。

購入経験

 日常の生活の中で人々は、地場産業・伝統産業品とどの程度関わり合いを持っているのか。購入経験については全体で「意識して購入したことがある」人は25・3%、「意識しないで購入したことがある」が20・4%となり、約半数が購入経験があるという結果となった。男女ではほとんど違いは見られなかったが、年代別ではやはり年齢が上になるほど経験率は上がり、特に「意識して」購入した人の割合が高くなる結果となった。

 今後、地場産業や伝統産業とどう関わっていきたいのか意向を聞いてみたところ、44・5%が「関わりたくない・特にない」と答えている一方、残りの55・5%が何らかの関わりを持ちたいと答えている。その具体的な関わりの内容は、全体で「購入したい(43・7%)」「製品について知識を得たい(23・7%)」「自分で製作体験をしたい(16・3%)」が上位となった=図1。「自分で製作体験をしたい」は特に、20代、30代、40代の女性の意向が高い結果となった。「直接、支援活動をしたい」「関わる仕事がしたい」など地場産業・伝統産業と強いつながりを持ちたい割合(コア層)は男女とも20代、30代で高くなった。

最も購入したもの

 調査対象者に、過去2、3年以内に購入した地場産業・伝統産業品について聞いた。最も多く購入していたものは上位から「焼き物・陶磁器」「食器・ガラス製品」「刃物」だった。性・年代別にみると、40~50代の男性では「焼き物・陶磁器」、60~70代の男性では「刃物」「木工品」、60~70代の女性は「織物、着物、布製品」の購入の割合が高い。購入したものの中で最も高かった品物の単価で3万円以上の割合が多かった製品は「着物・布製品」「ファッション雑貨(鞄や財布など)」「漆器」だった。特に「着物・布製品」では10万円以上の割合が27・3%、「ファッション雑貨」では12・0%あった。これらは主に和装に関わる品物と推測できる。性年齢別で3万円以上の購入が最も多いのは、60~70代の女性だが、2番目は20~30代の男性、次が60~70代の男性となった。

特産品のイメージ

 では普段人々は地場産業・伝統産業品にどのようなイメージを抱いているのだろうか。最も多い回答は、複数回答では、「日本の地域に伝わる生活・伝統文化に触れられる(60・7%)」「長く使えそう(53・2%)」「持つことで生活に深みが出る、豊かな気持ちになれる(50・3%)」だった=図2。単一回答では「日本の地域に伝わる生活・伝統文化に触れられる(24・2%)」「持つことで生活に深みが出る、豊かな気持ちになれる(19・6%)」が上位となり、地場産業品・伝統産業品の良さは、合理的、機能的な理由より、心の豊かさにつながるものだと考えている人が多いことが分かる。その一方で、ここ2~3年地場産業品・伝統産業品は購入していないという人に、価格以外に該当する理由を聞いたところ、20代は「使い方や楽しみが分からない」が多く、60代、70代は「既に持っている」が最も多い。

好きなデザイン

 地場産業・伝統産業品の好きなデザインを聞いたところ、全体では「昔からの伝統を忠実に守っているもの」が36・1%、「伝統の技は残しつつも、新しいデザインや使い方をしているもの」が63・9%と、伝統を維持しながらも時代感覚に合ったもののニーズが高い結果が出ているが、どちらかというと、男性の方が伝統に忠実であるものを好む傾向が見られ、特に20代男性は約半数の50・4%となっている。また興味をひかれる製品としては「特に人気や話題ではないが、自分自身で探しあてたもの(33・7%)」が最も多く、「国内で評価され、人気、話題となっているもの(25・2%)」と続くが、20代男女は、「自分で探しあてたもの」よりも「国内で評価され、人気、話題のもの」にひかれる傾向が高く、また、全体では6・5%だった「海外で評価されているもの、人気や話題が逆輸入されているもの」が、20代男性17・4%、30代男性14・9%、20代女性13・7%と周囲で話題になっていることが影響している結果となった=表1。また、「無名だがベテランの職人の技術がつまったもの」は60代、70代男女で高い結果となった。

高額だった製品

 過去2~3年以内の地場産業・伝統産業品の購入者に、最も高額だった製品を購入した場所を聞いたところ、生産地(生産者や生産地のウェブサイトを含む)が53・1%と半数を超え、都市部は33・4%、ウェブサイト・カタログ販売は11・3%だった。具体的には、「生産地の工房や工場、直販店(24・8%)」が最も多く、「生産地の土産物屋、駅など(13・4%)」「都市部の百貨店(12・5%)」と続いた=表2。性年齢別の特徴としては、20代、30代男性は生産地での購入が65・5%と高く、特に「生産地の工房や工場や直販店(31・4%)」「生産者や生産地のウェブサイト(12・2%)」が他の層より高い。一方、ショッピングサイトは2・3%に留まっている。図1を見ると、「製品の背景について知識を得たい」は20代、70代の男性に高い傾向だが、若い男性はそのために「生産地の工房や工場、直販店」「生産者や生産地のウェブサイト」と生産地につながる手段を選択していると考えられる。一方、70代男性は「都市部の百貨店(14・9%)」「カタログ販売(8・2%)」が他の層より高い傾向となった。また20代、30代女性は他より都市部での購入が多く「おしゃれな雑貨店やセレクトショップ(17・2%)」が特に多い。

 製品別の購入場所で生産地が最も多かったものは「焼き物・陶磁器(67・6%)」で、「生産地の工房・工場、直販店(34・7%)」「生産地で開催されたイベント(22・7%)」が多く、現地で見て触れて買う、また陶器市のようなイベントが購入機会になっていると考えられる=表3。また「漆器」も生産地の購入が多く、「生産地の工房や工場、直販店」は31・4%あった。一方、「ファッション雑貨」は「お洒落な雑貨店やセレクトショップ(13・5%)」「ショッピングサイト(19・5%)」での購入が多く、「刃物」は全体的には都心部での購入が他の製品より多く、また「生産者や生産地のサイト(10・0%)」「ショッピングサイト(17・1%)」とウェブサイトからの購入が多い。

 生産地との関わりについては全体の47・2%が「生産地で歴史や技術の背景を聞き、見学したい」と答えているが、20代、30代女性は35・9%と他世代より低い傾向となっている。

製作体験の意向

 地場産業・伝統産業品の製作体験の意向について、旅行先か自宅近くかに分けて聞いた。全体の81・6%が体験意向があり、69・7%が「旅行先で体験してみたい」、25・3%が「自宅近くで体験してみたい」と答えた=図3。「半日程度でつくれるものがあれば体験してみたい」は「旅行先で体験してみたい」人の72・9%、「自宅の近くで体験してみたい」の69・7%となった。ものづくりの体験は多くの人が、半日程度でと考えていることが分かる。「1日じっくり時間をかけてつくってみたい」は自宅近くの体験希望者の31・0%、旅行先の体験希望者の18・3%。1泊2日以上、あるいは何回か通う意向は旅行先での体験希望者は10%未満にまで減少した。性年代別ではどちらかというと男性の方が時間をかけて製作したいという傾向が見られた。また他世代より製作体験意向の強かった20~30代女性は特に半日程度の体験意向が高い。

まとめ

 同調査で、「地場産業・伝統産業品」に対する日本人の考え方には、性別や年代によって差があることが分かった。その中で意外にも特に20~30代の男性の関心が高いということが明らかになった。彼らは、製品の購入単価が高いだけでなく、購入場所も生産地が多く、地場産業や伝統産業品を支援したいという気持ちも強い。一方で20代女性は、半日程度で製作体験をしたい、購入場所も他世代に比べて都市部が多くなっており、都市部のセレクトショップには行っているが、20代男性より産業そのものへの興味や関心が軽い結果となった。現在は、高付加価値なものや新しいデザインの商品が増えていて、日本の地場産業、伝統産業品も現代のニーズに合った取り組みへと進化している。こういった動きが、若い人々にとって、地場産業・伝統産業を面白くするのかもしれない。一方で40~50代の関心が低いのは、子育て世代であることやバブル世代で海外ブランドが身近で進化を始める前の地場産業へのイメージが影響している世代なのではないかと推察される。また、全体として地場産業・伝統産業品は、「長く使えそう」などの実用性より、「持つことで生活に深みが出る」など「心の豊かさ」につながるものだと考えている人が多いことが分かった。

 しかしながら、性・年齢別の傾向で表れたように、地場産業・伝統産業品についての関心の度合いには「高い人(コア層)、軽い人(ライト層)」がいる。生産地側においては、多くの人に認知を広げるようなイベントでライト層向けに知名度を上げる取り組みも大事だが、一定以上に広がると核となるファンが離反する懸念がある。コアなファンが離れていかないよう普段から製品の良さや製作技術、歴史的背景を伝えるような継続的なマーケティングも必要だ。


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