上越線水上駅から普通列車で2駅乗ると、土合駅に到着します。下りホームが新清水トンネル内にある「モグラ駅」として有名で、出口まで462段もの階段があります。息を切らせて地上に出ると立派な駅舎があり、グランピング施設とカフェが併設されています。
駅前からローカルバスに乗って、7分で谷川岳ロープウェイの土合口駅着。ゴンドラに乗り換えて天神平に至り、リフトで天神峠まで登れば、上越国境の山々を見晴らせます。ここから谷川岳山頂まで往復5時間のトレッキングコース。冬は良質な雪が楽しめるスキー場になっています。
モグラ駅から、ローカルバス、ゴンドラ、リフトと乗り継げば、壮大な自然を楽しめる山岳リゾートに着くわけで、乗り物アトラクションとしても観光地としても魅力があります。
しかし、この観光ルートは、そのポテンシャルに比して、あまり活用されていないように感じます。何しろ、水上駅―土合駅間の定期列車は1日5往復だけ。駅からのバスの本数も少なく、列車と接続しているとは限りません。物好きでなければ、天神平へ向かうのに土合駅を使おうとは思わないでしょう。
かつての土合駅には、上野駅から直通の夜行列車が走っていて、登山客やスキー客でにぎわったそうです。しかし、近年は直通列車も夜行列車もなくなり、登山客もスキー客もあまり見なくなりました。
谷川岳へのロープウェイは、複式単線自動循環式の平成世代です。ただ、山上の天神平に着くと、施設全体に昭和の残り香が漂います。レトロなレストハウスで休憩するにつけ、ちょっともったいない観光地と、以前から思っていました。
そこへ、大きな動きがありました。これまで運営を担ってきた東武鉄道グループがロープウェイやスキー場を売却し、星野リゾートが購入したのです。星野リゾートは、観光施設の再生に定評がありますし、スキー場運営の実績も豊富です。ハードなイメージのある谷川岳を、ソフトな観光地として売り出すことを狙っているようです。
願わくは、JRとも連携して、土合駅を含めた交通アクセスの再構築に力を入れてほしいところ。上越線の上りには、国内では珍しいループ線もあり、モグラ駅と合わせて組み込めば、他に類をみないとても魅力的な観光ルートを作れそうです。
(旅行総合研究所タビリス代表)