テレビ東京の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」が、8月20日の放送をもって終了しました。
この番組は、田中要次と羽田圭介のコンビが、マドンナと3人でローカル路線バスだけを乗り継いで旅をするというもの。太川陽介・蛭子能収コンビで人気を博したシリーズの後継にあたります。
太川・蛭子時代に比べると知名度が低かったこともあり、放送終了が告知されてもあまり話題になりませんでした。それでも、5年間続いた番組が終わるとあって、ファンの間では惜しむ声が相次ぎました。
番組の終了理由は、ゴール成功を失敗が上回る「負け越し」の状態になったから、というもの。最後は3連敗して、終了に追い込まれてしまったのです。
田中・羽田コンビの5年間は、地方の路線バスが急速に衰退してきた時期と重なります。利用者減少と運転手不足で、各地でバスの減便や廃止が相次ぎました。そこにコロナが追い打ちをかけ、かつては容易にバスを乗り継げた区間も、歩かなければ進めなくなっていたりして、いつしか「路線バスと徒歩の旅」といった様相に。そうした時代の変化を考えれば、乗り継ぎ失敗が増えるのも仕方ありません。
太川・蛭子時代から応援していた筆者としては寂しい限りですが、番組として区切りを迎える時期に至ったのでしょう。今後、コンビを代えてシリーズが継続するのか、それとも完全終了するのかはわかりませんが、継続する場合はルート設定に苦労しそうです。
このシリーズは、日頃テレビではあまり紹介されないような、何気ない地方の風景を全国ネットで紹介するという側面がありました。観光地でもない小さな集落や、町中の素朴な飲食店が、路線バスという題材を通じて、ゴールデンタイムのテレビ番組で全国放送されるのです。
見方を変えれば、「ローカル路線バス」という乗り物を軸とすれば、これまでにあまり注目されていなかった地域でも、遠方から集客できる可能性があることを示したようにも感じられます。ローカル鉄道の終着駅に旅行者が集まるように、ローカルバスの終点にも、人をひきつける魅力があるのです。
この番組のおかげか、最近では、ローカルバスを乗り歩くファンも増えてきました。バスを観光資源として取り込んで、地域の活性化につなげられないものでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)