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ローカル鉄道の在り方を議論する国交省の有識者会議が提言を公表しました。輸送密度千人を下回る路線を「特定線区」と位置付け、国と自治体、事業者による協議会を設けることが骨子です。
協議内容は多岐にわたりますが、筆者が最も注目したのは、バス転換をする場合に「特定BRT」という新メニューが掲げられたことです。特定BRTとは、鉄道と同等の利便性を目指す、鉄道事業者やその関連会社などが運営するバス路線です。運賃は鉄道と同水準で、他の鉄道路線との通し運賃も設定されます。鉄道時刻表にも引き続き掲載されます。
例えば、JRがローカル線を廃止後、JR系列の代替バスが接続する鉄道駅構内に乗り入れ、ホームで列車と対面乗り換えができるようにします。バスは一部で専用道を走ったり、新技術を使うことで定時性や速達性を確保。いわば「鉄道扱いのJRバス路線」です。
ローカル鉄道の維持を地元が求める最大の理由は移動手段の確保ですが、それ以外に、地域の象徴としてのシンボル性や、遠方から旅行者を呼び寄せる観光的価値も重視されています。
利用者が減っても、鉄道駅はいまも町の玄関口ですし、鉄道路線は地図にも時刻表にも掲載されていますので、地域の象徴的な価値があります。鉄道そのものが観光資源になっていることもあります。
ただ、そうした価値のために巨額の赤字を垂れ流して鉄道を維持するのは大変です。そこで、運行費用の安い特定BRTという仕組みが考え出されたのでしょう。バス転換するものの、鉄道に準じた扱いを残すことで、地域の象徴や集客装置としての役割を保ちます。バス停を増設して学校や病院にも立ち寄れば、地域住民の利便性向上も期待できるでしょう。
特定BRTの施策には、ローカルバスの積年の課題に対する答えも含まれています。鉄道との乗り換えが不便、時刻表が分かりにくい、定時性に劣る、運賃が高い、といったことへの対応です。こうした課題を解決できるのであれば、地域公共交通の再構築という点で意味があるでしょう。
特定BRTのモデルは、JR東日本が三陸地区で導入したBRT路線とみられます。一定の成果を上げているので、制度化されることになったのでしょう。いっそのこと、既存の地方の基幹的路線バスも「特定BRT」にしてしまっていいのではないでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)