JR、東急の蒲田駅と羽田空港の間には、シャトルバスが運行しています。途中の停留所は大鳥居だけという「準ノンストップ」で、所要時間は約30分です。
京浜東北線や東急線から空港へ行くのに便利なバスですが、乗ってみると意外に旅行者は少なく、空港関係者や地元利用者が多い印象を受けます。運行本数が毎時2、3本と少ないこともあり、慣れていない旅行者には使いづらいのでしょうか。
蒲田駅から羽田空港へ行くには、京急蒲田駅まで800メートルを歩く方法もあります。商店街を抜けていけば、ほとんどアーケードの下を歩けますので、距離ほどの遠さは感じません。京急蒲田駅から羽田空港までは京急電車が頻発していて、所要時間は10分ほど。バスより確実に着けるでしょう。ただし、荷物の多い人には大変な乗り継ぎですし、何より1キロ近くも歩くのは面倒です。
ということで、蒲田駅から羽田空港へのアクセスは一長一短あります。これを一気に解決しようというのが「蒲蒲線」計画です。
蒲蒲線は、蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ地下新線計画です。東急多摩川線の蒲田駅を地下化し、京急蒲田駅まで延伸します。
蒲蒲線の構想は古くからありますが、採算性の問題などから先送りが続いていました。しかし、このほど東京都と大田区が費用負担の割合で合意し、ようやく建設への枠組みが固まりました。
わずか800メートルの延伸ですが、地下化する区間はもっと長いため、総事業費は1360億円を見込みます。東京メトロ南北線の品川延伸が2.8キロで1310億円ですので、蒲蒲線の事業費は高く感じられ、費用対効果を疑問視する声も小さくありません。しかし、実現すれば、田園調布など大田区の広域から羽田空港アクセスが便利になりますし、広く東横線や目黒線沿線にも効果が及びます。
京急沿線の住民も、東急沿線の企業や学校に通いやすくなるでしょう。需要予測では、航空旅客の2.8倍の都市内旅客がいると見込んでいて、空港利用者以上に、沿線住民の利便性向上に資する路線と判断されています。
将来的には大鳥居まで延伸して、京急線に乗り入れて羽田空港まで直通運転する構想もあります。ただ、線路の幅が異なるので、残念ながら、こちらの実現は極めて困難なものとなるでしょう。
(旅行総合研究所タビリス代表)