【スペシャルインタビュー】公明党が進める観光振興の取り組み  山口那津男代表に聞く

  • 2022年6月24日

公明党 山口代表

観光は経済の原動力、地方創生の切り札

 国土交通相を歴代輩出する公明党の山口那津男代表に、観光振興の取り組み、コロナ禍で苦境にあえぐ観光業への支援策を語ってもらった。(党本部で。聞き手は本社取締役編集長・森田淳)

 ――観光業が日本の経済・文化に果たす役割や期待について、考えをお聞かせください。

 観光は歴史的に、日本の産業の重要な柱を担ってきたと思います。江戸時代のお伊勢参りや温泉番付、さらに昔からその歴史があったかと思います。これらを通じて地域経済、あるいは独特の伝統文化を育んできたのだと思います。

 その役割は今も変わりません。むしろ多様化している、と言った方が良いと思います。

 高度成長期、日本の経済を引っ張ってきたのは主に工業でした。ですから地方に工場が進出したり、そうした工業を中心とする雇用の場が生まれたりしてきました。

 しかし今、産業構造が大きく変わり、グローバル化が進む中で、工業が地方の経済を担う、新たに担っていく勢いというのは大きく期待できない状況もあります。

 そうした中で、観光が果たす役割がますます重要になってきました。国内の人の流れを作るという要素は極めて大きいのですが、このグローバル化によって世界の人々を引き付けていく、いわゆるインバウンド。この要素も大きくなってきました。

 観光立国という言葉がありますが、これは私の記憶では、公明党の冬柴鐵三さんが国土交通相時代に強く打ち出し、それが今に定着したように思います。

 ――コロナ禍と燃料・原材料価格の高騰が地域経済に大きな影響を及ぼしています。観光産業への影響をどう受け止めていますか。

 コロナによって大きな打撃を受けました。2年以上、感染が波を繰り返しながら襲ってきたわけで、これは本当に深刻な打撃を与えていると思います。

 また、折からの物価高。特に燃料費が高騰しているわけですね。ガソリン、軽油、重油、灯油、あるいは航空機燃料など。この影響が宿泊、交通、土産店、飲食店など、観光業界のあらゆる所に及んでいます。

 公明党は3月17日に、国民生活総点検緊急対策本部を設置して、全国にこの総点検を呼び掛けて、いろいろ調査しました。

 私自身も例えば観光バス。しかも大規模ではなくて比較的小規模な観光バスの会社に調査に伺いました。そこでの生の声というのは非常にショッキングでした。

 観光バスですから、主に団体客を受けていたわけですが、コロナでほとんどなくなってしまいました。そこへきて今度は燃料の値段が上がってくる。リッター1円上がっても大変な打撃なんですと、悲鳴に近い声で叫んでおられました。

 早く今の状況を脱出したい、そのための施策をお願いしたいと、そのような声を直に聞きました。

 また総点検をやる中で、観光関係の業界はもちろんですが、47のさまざまな業種の団体からヒアリングを行いました。

 さらに公明党の3千近い地方議員が個人や企業経営者のさまざまな生の声、4333件の具体的な声を伺いました。

 これらの切実な声を受け止めて、2回、政府に緊急提言を行いましたが、それをほぼ取り入れる形で4月の末に政府・与党で総合緊急対策を決定しました。

 まずは予備費を活用して、この原油由来の燃料費の値上がりを抑える。石油の元受けに補助金を出して、値段を抑える、ということを行いました。

 緊急対策は、この油の値上がりだけではなく、小麦粉とか家畜の飼料とか、さまざまなところに影響が及びますから、それらを抑える。

 食材費が上がると学校給食にしても保護者の負担を招きますから、こうした負担を招かないように地方創生臨時交付金、これを1兆円用意して自治体にお配りしました。自治体としては地方ならではの公共交通、例えば中山間地のデマンドバスや離島の船などの支援にもなる。それから公共料金。水道は自治体が管理していますから、その料金の大幅な値上がりを招かないようにするなど。この地方創生臨時交付金で地域の実情に応じた対策を取っていただく。もちろん、観光を維持するための使い道ということもあるでしょう。

 このような緊急対策で、既に用意していた予備費を多く使い、残りが少なくなりました。コロナは今、静まってきましたが、新たな変異株の発生など、何が起きるか分かりません。災害が発生する恐れもあります。これらに備えて予備費をしっかり確保する補正予算と燃料費を6月から9月まで補助する仕組みを作りました。

 参議院選挙後、秋には国会が開けるようになると思います。その間、どんな事態に対しても機敏に対応できるような措置を取れるようにしました。観光に携わる方々を十分支援できるように、具体的な措置を講じていきたいと思います。

 ――地域の観光産業のコロナ禍からの回復に向けた支援策、観光産業従事者をはじめとする生活者支援について考えをお聞かせください。また、公明党は4月14日に発表した「物価高騰から国民生活を守る『新たな経済対策』に向けた緊急提言」で、「新たなGo Toトラベル」の実施を政府に求めていますが、Go To事業の必要性についても認識をお聞かせください。

 まずは雇用を維持すること。観光は人へのサービスが中心になると思いますが、おもてなしの技術やノウハウは人に蓄えられていますよね。そのような方々が雇用の場を失って、戻ってこられなくなると、観光産業の立ち上がり、復興が難しくなります。

 ですから雇用を維持するための雇用調整助成金。これをしっかり用意することです。事業主が申請しにくい事情もありますが、そういう場合は働く人の側からも請求できる休業支援金という特別な制度も作って、復興の支援を続けてきました。

 観光に携わる方々に大変喜ばれました。コロナ禍がまだ続いていますので、制度の延長、延長を繰り返し、このたびも7~9月の3カ月間、延長を決めさせていただきました。

 政府の一部から、延長は2カ月でいいという意見もあったのですが、公明党は3カ月にすべきだと主張し、その延長を行いました。

 事業主に対しての持続化給付金も喜ばれました。法人だけではなく、個人事業主の方への給付もあり、幅広く活用されました。

 ほかにも生活困窮世帯に対する10万円の給付や、1口20万円で返済の猶予期間を長く取った緊急小口資金などの制度も併せて活用いただき、コロナ禍をしのいでいただきました。

 Go Toキャンペーンについては、公明党はかねて、感染状況を見極めた上で、実施すべきであると主張してきました。予算を確保して、実施できる状況が生まれたらすぐに実行する。予算確保と政策の必要性を訴えてきました。

 キャンペーンは大変効果があったと、観光業界の方々から評価をされています。しかし、都市部を中心に、感染の拡大時期と重なったものですから、このGo Toについては非常に慎重な意見もあります。

 ですからあのときのいろいろな教訓を生かした新しいGo Toトラベルをやるべきだと提案をしています。

 例えばワクチンを3回、4回と接種した人や、検査の陰性証明を持っている人は滑らかに動けるようにすること。

 以前のGo Toは土、日、休日に利用する人が偏った傾向もありました。時間とお金に比較的余裕がある方々で、旅行をしたいと思っている方々が大勢いらっしゃいますから、その方々には平日にゆったりと旅行をしていただいた方がいいのだろうと、平日への分散化を促すような対策も必要だと思います。

 それから連休などの繁忙期はキャンペーンを適用せず、お客さんが減り気味のところに適用するなども行ってみたいと思います。

 前回はめったに泊まれない高額旅館にこの際泊まってみようという動きがあり、中小の施設には恩恵がなかなか届かない、という声がありました。ですからもっと幅広く、できるだけ中小の所へ効果が及ぶような取り組みも行いたいと思います。

 国のキャンペーンとともに、国の「県民割」補助や地方創生臨時交付金などを活用して、都道府県で行うキャンペーンも増えています。私が住んでいる東京都も始めました。国のキャンペーンと連携すれば、さらに力強い取り組みになります。地方と国との連携にも期待したいです。

 コロナ禍で動けない分、貯蓄が増えたというデータがあります。過剰貯蓄といって、日本だけではなく、先進国はみんなそのような状況です。

 物価高で生活を守る部分で使われることがもちろんあるでしょうが、観光に使われることを期待したいです。Go Toトラベルとうまく結び付けばいいと思います。

 ――緊急提言では、観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」について、中長期的な視点から基金化を提案していますが、その狙いについてお聞かせください。

 予算は単年度で使い切ることが基本になっていますが、再生事業が1年間で全てできるかといえば、なかなかそうはいきません。

 再生計画が複数年度にわたる場合には、継続して財源が保証される見通しがないと計画が立てにくいし、実行もしにくいことになります。

 単年度の原則があるとすれば、予算を単年度で大きく計上して、これを基金化する。そして多年度にわたり使えるようにする。そのようなことができるような仕組みを作るべきだと思います。これまで予算の作り方の例外だということであれば、ここに限っての法律も検討すべきです。

 投資の効果が大きい、日本の経済全体に大きな影響を及ぼすからやるのだ、だから理解してほしいと、そのような考え方で推進するべきだと思います。

 観光地の宿泊施設などは、一定のサイクルで新しくしていかないと、時代のニーズに合わなくなっていきます。古くなったものがそのまま放置されていると、地域全体が沈んでしまう。再生する努力を政治の支援のもと、行う必要があります。

 ――宿泊施設には当面の集客以外にも、生産性向上、人手不足などの問題が指摘されています。宿泊産業の振興についてどのようなイメージを持っていますか。

 施設の改修、新設とともに、そこに携わる人材の開拓が必要だと思います。

 これからの時代を考えますと、やはり女性の力をもっと生かすこと。そしてデジタル化が叫ばれていますが、それに通じた人材の確保。あるいは就職氷河期でチャンスに恵まれなかったけれども、働くことに意欲を持っている方たちも大勢いらっしゃいます。そのような人たちが活躍できるような場を作ることも含めて、人材の確保と育成。この二つの面の取り組みが重要だと考えます。

 人材でいうと、インバウンドが戻ることを前提に、外国の人材を生かすことも重要です。

 言葉の壁というものがまだまだあります。それを滑らかにするためには受け入れ側も外国の人材を上手に生かす。外国人観光客も安心できるし、トラブルも防ぐことができる、ということにつながります。

 ――政府が水際対策を緩和し、訪日外国人の観光について、添乗員同行などの条件付きで再開しました。インバウンドの本格的な再開に向けた施策はどうあるべきでしょうか。

 進めるに当たり、ある程度統一的なルール、方向性が大事だと、ガイドラインが6月7日に公表されました。これを現場で浸透させることが必要だと思います。

 訪日に1日2万人の制限があります。2019年のピークのときは1日平均14万人ですから、それに比べるとまだ微々たるものですが、一気にというわけにはいきませんので、徐々にそれに近づけることが妥当だと思います。

 最初はガイド付きの団体客からですが、個人で楽しみたいという方も大勢いらっしゃるでしょう。クルーズ船も大変人気があり、停泊できるバースを増やし始めたところでしたがコロナで往来が中断し、今は宝の持ち腐れのようになっています。生かされるときが早く来ればいいと思います。

 ――世界経済フォーラムが発表した「旅行・観光開発指数」のランキングで、日本が世界1位になりました。日本の観光産業の競争力、観光資源の魅力をどう認識されていますか。また、日本が「観光先進国」入りするために今後必要となる政策のイメージは。

 ランキングで1位になったと聞いて、驚いた国民が意外と多いのではないでしょうか。観光といえば海外に見られるような古い遺跡とかダイナミックな自然の景観を思い浮かべるかもしれません。

 でも、日本には日本ならではの魅力があります。自然と文化が融合、調和しているところや、箱庭的といいますか、狭い所にいろいろな観光魅力が集中しているところなど。日本の観光資源について、もっと日本人自身が自信をもって、それをどう楽しんでもらえるかを考える必要があると思います。

 地方には新しい気付きによって、新しい、有力な観光資源となり得るものがまだまだいっぱいあります。

 生産性が低いとよく言われますが、日本ほどきめ細かな付加価値を作り出しながら、それに対する適切な対価をもらっていない所はないと思います。例えば旅館に泊まれば浴衣をサービスするとか、土産物を買えば丁寧に奇麗な包装をしてくれるとか。目に見えないものを含めて、そういう付加価値というものは日本には多いと思います。

 ですから生産性が低いのではなく、生産力に適切な評価がされていないと、むしろ見るべきではないでしょうか。日本の観光サービスは本当に奥行きがあります。もっといいところを宣伝する必要があります。

 ただ、一方で足りないと指摘されているものもあります。一つがデジタル化。ICT、AIなどをもっと活用して、Wi―Fiの整備など、世界のどの人も効率的に楽しめるような環境づくりが大事ですね。

 それから言葉の壁。オリンピック、パラリンピックでは外国語ができるボランティアの人を多くそろえ、活躍していただきました。スムーズで、ストレスフリーにつながったと喜ばれていました。

 観光地でもそのような人材が必要ではないでしょうか。従事者の方にも簡単な外国語を研修して身に付けていただく。言葉は何回か使っているうちに身に付くもので、決して恐れるものではありません。

 表示についても英語、中国語、韓国語の表記がなされている所がありますが、外国の方がめったに来ない地域は少ない。表記があることでお客さんを呼びやすくなりますので、これについても工夫をした方が良いと思います。

 先日、シンガポールのリー・シェンロン首相が来日した際、シンガポールの人々はみんな日本の観光が好きだとおっしゃっていました。だけど、有名な所はほぼ行き尽くしている。地方の、まだあまり知られていない所に行きたがっているので、そこをもっと教えてほしいとおっしゃっていました。

 それはシンガポールの人に限らないと思います。10年ほど前、アルゼンチンの国会議員にお会いしたときにも、東京、京都以外の穴場の観光地を教えてほしいと言われました。

 私の地元は東京の葛飾区です。葛飾区は江戸時代から花しょうぶが有名です。花しょうぶを庭園に植えて、それを眺めながら料理やお酒を楽しむという名所が昔からありました。

 葛飾区の堀切菖蒲園には全国の著名な花しょうぶの株が200種類あり、すごく見応えがあります。水元公園には、こちらは100種類ですが、株数が多く、それが水辺に広がっているという魅力的な空間があります。

 花しょうぶの名園は全国にいくつもあるでしょうが、葛飾区は都心に近い。30分や1時間ほどでこれだけ自然豊かな、見応えがあるものはなかなかない。もっとお客さんに来てもらい、魅力が広く伝わればと思います。

 ――公明党は月曜日の午前中を休みにして経済を活性化させる「シャイニングマンデー」の施策を打ち出したことがあります。今後引き続き検討する考えはありますか。

 検討の価値がありますが、その後に働き方改革が提唱され、関連する法律ができました。今、週休3日にしたらどうかという意見もあり、実際に実行しようという企業も出てきています。有給休暇をもっと消化しようとか、仕事と休暇を両立するワーケーションを推進しようなど、さまざまな働き方、休み方を融合させたプランが出てきています。

 シャイニングマンデーもその一つだと思います。多種多様なやり方があり、それぞれが工夫をしていけばいいと思います。

 ――地方に組織力があり、「小さな声を、聴く力。」を重視する公明党として、コロナ禍で苦境にあえぐ観光事業者にメッセージをお願いします。

 キーワード的に強く訴えたいのは、「観光は地域経済の原動力」ということです。

 観光はコロナで痛めつけられた経済社会を復興に導くエンジンになる。

 もう一つは、観光は地方創生の切り札になる。

 この二つのことから観光を強力に推進していきたいと思います。

 公明党は地方議員、国会議員合わせて全国に3千近い議員がおり、それぞれがネットワークとして動いています。

 「小さな声を、聴く力」という象徴的な言葉があります。現場を大事にする。受け売りではなく、実際に見て、聞いて、情報を共有して政策を推進する。これが公明党の長年のモットーです。

 岸田首相が聞く力が大事だと言っているのは、自民党のある方が、公明党が推進してきたことを、これは良いことだから一緒にやろう、そういう発想ですよと、解説しています。

 この「小さな声を、聴く力。」のある公明党が、さらに観光のさまざまな課題、ニーズをキャッチして、聞きっぱなしではなく、政策として実行する。

 公明党は政権に就いて20年以上の歴史があります。その場の思いつきでアイデアを言うだけではなく、実際に予算や法律を作り、実行するという経験を長く積んでいます。与党の一角として重要なポジションにあります。

 今回、参議院選挙を前に、「日本を前へ」というキャッチフレーズを考えました。公明党は、まずは人への投資を打ち出し、賃金を上げる、消費する力を付ける、いわば分配と成長の好循環。この取り組みを進めていきたいと思います。

 それがひいては観光振興のエネルギー源にもなると思っています。

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