【シニアマイスター経営の知恵 182】修学旅行と反転学習 帝京大学経済学部観光経営学科准教授 花井友美


 旅行には娯楽的意味だけでなく、旅行経験を通じて知識を獲得したり、個人の成長を促すなどの教育的な効果があると知られている。教育的効果を目的とした旅行の形態の代表例が修学旅行である。コロナ禍で修学旅行の中止が相次いだが、日本修学旅行協会の発行する「教育旅行年報 データブック2022」によると2021年度の中学校での修学旅行実施率は全体78・3%、高校での修学旅行実施率は54.1%であり、徐々に修学旅行を実施する学校が増えてきている。今回は「日本の修学旅行」をテーマに話していきたい。

 日本の修学旅行は「学習指導要領」における特別活動のうちの学校行事の一つに位置付けられている。日本の修学旅行には二つの特徴がある。一つは、学校の教育カリキュラムに基づいて行われ、学年単位全員参加を基本としているということである。

 もう一つは事前学習の実施である。1968年当時の初等中等教育局長から都道府県教育委員会、知事、付属学校を置く国立大学長、国立高等学校長あてに出された「小学校、中学校、高等学校等の遠足・修学旅行について(通達)」の中で、遠足・修学旅行の計画と実施中および事前事後学習の指導の徹底について述べられている。そのため、多くの学校では、修学旅行前に旅のしおりを作成したり、訪問先について調べ発表をするなどの事前学習の時間を設けている。

 事前学習は修学旅行生の旅行体験(教育効果)にどのような効果があるのだろうか。事前学習をすることで、訪問地域に対する興味・関心や訪問の意図や理解が高まり、修学旅行体験自体の評価が高まると指摘されている。確かに感覚的にもしっかりと事前学習をする方が教育的効果が高まるように思える。

 ところで、教育の現場で最近注目されているのが「反転学習」である。授業で知識をインプットし、その後の復習でアウトプットするという流れを反転させ、予習で知識をインプットし、授業でアウトプットするという流れにするものである。反転学習をすることで学習者は自己調整的に学習を進める方略を修得し、授業へのエンゲージメントが高まるという。修学旅行も同様で、事前学習(予習)で知識をインプットすることで、修学旅行本番(授業)でより効果的なアウトプットが期待できる。

 修学旅行の思い出として事前学習を挙げる人はそうはいないであろう。しかし、事前学習をすることで、修学旅行本番の体験がより思い出深いものになるのかもしれない。

 (一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員・帝京大学経済学部観光経営学科准教授 花井友美)

 
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