【シニアマイスター経営の知恵 178】ブラっとした旅を楽しみたい 専修大学経営学部教授 佐藤 暢


 私の専門は地球科学で、私的な旅行先でも、そこの地層や岩石に目が向いてしまう。そのような旅の仕方は、例えばNHKの「ブラタモリ」でタモリさんがしているようなものだ。番組では、地質や歴史に詳しい専門家が登場して、時にはタモリさんの見識に驚きつつ、解説を加えてくれるが、普通の旅行者はどうしたら良いだろうか?

 世界で初めての国立公園はアメリカ合衆国のイエローストーンである。アメリカの国立公園は全て国有地で、ホテルや土産物屋も国立公園局が設置し、民間委託している。ビジターセンターは、場所的・運営的に国立公園の中心となっている。例えば、ビジターセンターでのレンジャー(自然保護官)によるイベントなどの情報をホテルで確認することもできるし、ビジターセンターのブックストアで売られている、ちょっと専門的なガイドブックをホテルや土産物屋で購入することもできる。

 日本でも国立公園のみならず、近年では地質や自然環境に価値がある地域が世界自然遺産やジオパークに指定されている。ここでもビジターセンターで情報を入手するのが確実である。しかし、ビジターセンターは通常、「わざわざ行かなくてはいけない場所」に位置していることが多く、身近なホテルや土産物屋ではビジターセンターの情報や専門的なガイドブックを入手するのも難しい。

 へき地にあり、入場料も徴収し、「自然に触れたい人だけ来い」というような意識が垣間見えるアメリカの国立公園と私有地を多く含み、人々の暮らしや産業・開発との両立も必要な日本の国立公園を一概に比較することはできない。しかしながら、旅行の目的や興味・関心も多様化している近年、例えば、ビジターセンターの建物を移設することは無理にせよ、公であるビジターセンターと民のホテルや土産物屋が連携を取り、その地の地質や歴史についての、ちょっと学術的な情報を手軽に入手できるような環境を作れれば、ある時はグルメに、ある時は伝統工芸に、ある時には「ブラ」に、というように、その地域の魅力をより多角的に引き出せるのではないだろうか?

 (専修大学経営学部教授 佐藤暢)

 
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