【シニアマイスター経営の知恵 165】もうドンブリ勘定はやめよう 日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 帯川 修


 今年は3年ぶりに制限のない紅葉シーズンを楽しめそうだ。ようやく宿泊業に光が見えてきた。ただし、生活必需品の値上げが相次いでおり利益を出すためにはこれまで以上に頭が痛い。

 1泊2食を基本として販売している旅館やリゾートホテルの費用の中で人件費と共に大きな割合を占める料理原価に焦点を絞ってみよう。料理原価率の算出方法が宿泊施設により異なるということを前回(「シニアマイスター経営の知恵 コロナ明けのために今できることを〈観光経済新聞 2021年10月4日〉」)申し上げた。

 (1)対象売上を総売上にする

 (2)対象売上は料理を含めた宿泊売上とする

 (3)対象売上を料理売上とする

 正解は(3)だが、(2)の算出方法を採用している宿泊施設が多い。もし、(1)を採用しているとしたら、これは論外である。

 例として1泊2食の宿泊料と夕朝食料を半分ずつにする。対料理売上の料理原価率を34%と設定した場合、対象売上を料理を含めた宿泊売上とすると、標準原価利率は17%になる。

 ところが、宿泊客は全てが1泊2食ではなく、朝食付きもあれば、素泊まりもある。その場合は、料理売上が少なくなり、宿泊売上の構成比率が大きくなるため飲料や売店を含めた原価率の合計は低くなる。以上のことから「(2)対象売上は料理を含めた宿泊売上とする」も間違いだ。
 これまで多くの旅館やリゾートホテルを見てきたが、宿泊の伴わない宴会は別にして、宿泊客の料理売上を集計していない宿泊施設は多い。

それでも(2)の結果だけを見て、先月は料理原価率が高かったと料理長に献立や仕入れの修正を指示している経営者が本当に多いのだ。

 多くの宿泊施設ではKPIなどのデータにより経営をしているが、データ算出の手順と結果による方針の決定を間違えたら命とりになる。
(2)の結果の料理原価率が低いのに、原価率合計が下がらないことがあれば、ぜひ料理売上を集計してから見直してほしい。

 全国的な旅行割引も始まった。販売価格を決める時に売上構成比率と原価率を見直すことにより利益体質に移行しよう。そして貴重なスタッフに還元してほしい。

 (NPO法人シニアマイスターネットワーク会員・日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 帯川修)  

 
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