【シニアマイスター経営の知恵 156】高等学校の商業科で新科目「観光ビジネス」が導入 九州産業大学副学長 千相哲


 コロナ禍前の日本の観光はインバウンドに大いに沸いたが、一方では負の影響として一部の地域で観光公害という社会問題が発生した。ポストコロナの観光のあり方が模索され、持続可能な観光が強調されるようになった。

 その中で、観光と地域の関係、地域(住民)から観光を見る視点が重要視されているが、持続可能な観光を実現するためには、地域に誇りを持つ人たちを巻き込んでいくことが肝要である。

 2018年3月、文部科学省より学習指導要領の改訂が発表され、2022年度より高等学校(商業科)では「観光ビジネス」が教科に加えられた。高等学校学習指導要領によると、「観光ビジネス」は「マーケティング」「商品開発と流通」と共に「マーケティング分野」の科目となっている。

 「観光ビジネス」の狙いは、実践的・体験的な学習活動を通して(1)観光資源の効果的な活用(2)マーケティングおよび国内旅行と訪日観光の振興策の考案(3)観光ビジネスを展開する資質・能力を育成するとされ、そのための指導項目として(1)観光とビジネス(2)観光資源と観光政策(3)観光ビジネスとマーケティング(4)観光ビジネスの展開と効果、の四つが設けられている。全国で約600校ある商業学科系高校で商業の見方や考え方を学び、観光ビジネスの展開に必要な資質や能力を育成することによって、地域観光が推進役、担い手を確保できるといった効果が期待できる。

 しかし、担当教員自体の「観光」に関する幅広い知識の蓄積が十分でない、高校生向けの「観光ビジネス」の教科書がない、などの問題点がある。

 私が所属している大学では福岡県教育センターからの要請を受け、昨年度より観光ビジネス担当の高校の教員を対象に、観光学入門の聴講(授業科目を参観)と探究学習に関するアドバイスを行っているが、観光地域づくりの若手人材、観光ビジネスの担い手の育成や大学における観光教育の質の向上のためにも、高大連携・高大接続・産官学連携に積極的に取り組む必要があると感じている。

 (九州産業大学副学長 一般社団法人日本宿泊マネジメント技能協会会員 千相哲)

 
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