
新型コロナウイルス感染症(以降、COVID―19)の世界的流行の影響により、外出自粛や移動の制限が余儀なくされる中、オンラインツアーへの注目が高まってきました。
公益財団法人日本交通公社が2021年3月に実施したオンラインツアーに関する調査によると、3万3152人の回答者(1都3県の男女、18~79歳)のうち、「オンラインツアーを体験したことがある」回答者は2.9%、「今後、体験する予定がある」回答者は1.1%、「機会があれば体験したい」回答者は20.6%となっており、オンラインツアーに参加したことがある人の人数はまだ少なくとも、オンラインツアーに関心を持っている人が一定層存在することがわかります。
さて、日本ではCOVID―19を契機に注目されるようになってきたオンラインツアーですが、欧米諸国ではインターネットの技術が飛躍的に進化した1990年代以降、インターネットやVRの技術を活用したオンラインツアー(もしくはバーチャルツアー)への関心が高まってきました。
オンラインツアーは、オーバーツーリズムや観光による環境問題を回避し、観光と自然保護の両方の需要を満たす新たな観光の形として注目されました。また、破壊されたり、著しく劣化した観光地や遺跡をVRの技術で再現することで、失われつつある観光資源や文化を保全し、伝承するという面でもオンラインツアーは可能性を秘めたものでもありました。オンラインツアーは、観光地、特に価値が損なわれようとしている観光地が旅行者との接点を持ち続けながら持続的に発展していくための手段という側面がありました。
私は、旅は旅行者と観光地をつなぐものだと思います。観光地を訪れ、さまざまな体験をすることでその観光地とのつながりや愛着を深めていくのが旅の醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。以前のように自由に観光地を訪れることが難しい最中、オンラインツアーは観光地が旅行者と接点を持ち続ける上で重要な役割を担っていると思います。
最近、「COVID―19が収束したらオンラインツアーはなくなるのでしょうか?」という質問を受けることがあります。私には将来を予測するクリスタルボールはありませんが、観光地と旅行者をつなぐという役割はCOVID―19に関わらず求められるものではないでしょうか。
(帝京大学経済学部観光経営学科 花井友美)