大学ではさまざまな感染対策を講じながら春から対面授業を開始したが、その後に出された緊急事態宣言を受け、オンライン授業に戻し、宣言解除からは再び対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド型」の授業を行っている。私のいる大学では、状況に応じて対面、オンライン、ハイブリッドのいずれにもシフトできるように、ネット環境のインフラ整備に力を入れ、学生たちが不利益を被らず、健康も害さないように配慮を施している。
しかし、通常の授業ができない状況が長引き、精神的な不調、将来への不安などを抱えている学生も多い。特に観光関連企業の新卒求人数が激減していることもあり、観光関連企業を志望する学生の落胆は大きい。
本格的な国際観光の再開までには時間がかかりそうであるが、ロンドンに本部を置く、国際的な市場調査会社であるユーロモニターインターナショナルは、アジアの国際観光は2021年に急回復し、2022年にはコロナ前の水準に戻ると予測している。既に一部の国においては防疫信頼国家との間で団体旅行を許可する「トラベルバブル(Travel Bubble/隔離義務なしで自由に域内で行き来できる)」を本格推進している。また、観光業へ依存度の高いタイ、インドネシアなどでは、ワクチン接種者に隔離措置を免除し、観光客の受け入れを急いでいる。
今後、国際化、グローバル化の動きが停滞し、観光市場の全体規模は縮小傾向となる可能性が高く、観光地間の競争が激しくなることも予想される。ニューノーマル時代の観光のあり方が模索されているが、5Gの導入、越境ECの拡大、観光DXの推進、SDGsの重視など、社会の変化に着目した取り組みが加速され、その対応が求められている。
観光分野における有能な人材の確保と育成は観光業界の大命題であるが、時代の変化に対応できる人材の育成が急務である。ポスト・コロナの時代は必ず来る。教育は百年の計という言葉があるが、観光教育の質を向上し、新時代の観光人材の育成に取り組みたい。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 九州産業大学副学長 千相哲)