昨今の未曽有の災禍において、先行きが見えない状況の中、私たちは今何をすべきか、どのような思考を持ち行動しなければならないのか熟慮するときなのであろう。わが故郷「沖縄」は観光立県であるが故に、この渦中にどのような状況下にあるのかは言わずもがなである。沖縄に限らず、観光業界のみならずではあるが、観光業を生業として身を置く立場から、個人的な主観で沖縄観光の今を考えてみた。
今から50年前1972年、沖縄県の観光入域者数は59万人、観光収入324億円であった。その後、経済を揺るがすさまざまな出来事に直面しながらも徐々に増加し2012年以降インバウンドの需要も高まり、2017年には1兆1700億円と過去最高を更新、2018年にハワイを超える1千万人超の観光客数にまで上った。2014年以降、国内外の観光入域者数の急激な増加により、沖縄の経済は観光業が占める県内総生産約3割という高さがうかがえる。また県内労働者4人に1人は観光関連ともいわれている。
むろん需要と供給バランスの構築が掲げられ宿泊施設、観光施設の伸張に奔走してきた最中でのコロナ禍。2020年観光入域者数は373万人で前年比率マイナス63.2%と減少数、減少率ともに過去最大となった。
旅行自粛、インバウンドの消滅、企業や小売店の倒産や撤退。耐え難い状況にはあるが、これまで幾度となく訪れた経済危機を乗り越えてきた結果「沖縄」がブランディングされるまでになった。この渦中をどう耐え抜き、今後収束を迎え世界が動き始めたとき、沖縄観光の新たなスタートにどう備えるかが問われているのではないか。
時代を画すること、世界が見る「沖縄」オンリーワンであるというゆえんをつくる。癒やしの自然、秘めたる文化、そして魅力ある人々と言えるだろう。
沖縄では本島北部と西表島の世界自然遺産登録が見込まれているのと、アドベンチャーテーマパークの建設、首里城正殿の復元など今後観光産業に光がある。あとは観光産業に従事する人たちの職務に対する誇りや生きがいといったことへの重要性を併せ持ち水準を上げる。雇用の在り方と人材教育が必須であろう。
「人」は土台である。世界に劣ることのない、独特な空間とハイクオリティな「ヒト」「モノ」を築き、新たな沖縄観光を目指す。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 株式会社グランディール代表取締役 與那嶺優子)