賛否両論あるコロナ禍でのGo Toトラベルキャンペーンだが、間違いなく冷え込んだ観光需要の下支えになっているのは明らかである。地域や施設によって差はあるものの、期間延長の提案が上がっているのは、他ならぬ観光業の裾野の広さだろう。
どんなに小さな宿泊施設であっても取引業者は数知れず、物流など間接的に携わる業者も加えると、宿泊代金のほとんどはそれらに流れることとなる。また、移動に伴い、交通業界や石油業、車などの製造業にまで恩恵が及ぶことになる。
少し視点を変えてみると、それぞれの消費税や入湯税など、税収増にもつながるはずで、つまりは税金を投入してキャンペーンを行うことで、観光業をはじめ多くの企業やそれらの従事者、ひいてはその家族にまで恩恵が及ぶと同時に、ある程度は税金として戻ってくることになる。国としてもこれだけの大規模キャンペーンは初めてのことで、開始当初は不備もあったものの、その結果は大いに評価したい。
また地域共通クーポンは現場での業務負担が大幅に増えたものの、追加飲料や売店商品の増売にもつながるなど、その恩恵は大きい。また、どちらかというと宿泊施設よりも土産店や飲食店で恩恵があることを考えれば、その波及効果はまさに地域を救っているともいえよう。地域共通クーポンは隣接県でも使えるため、点ではなく面でお客さまを迎えるという意識も観光従事者には自ずとついたのではないだろうか。
もちろんこれらの恩恵は期間限定の特需であることを忘れず、われわれ宿泊業者は常にリスクを想定し、Go To後、アフターコロナの対策も模索し続けなければならない。
まずはお客さまの安全・安心を最優先に、魅力ある選ばれる施設や地域づくりをすることが肝要といえよう。
こういう時期だからこそ、ただひたすら耐えるのではなく、アフターコロナの観光需要爆発のための準備期間とポジティブに捉え、情報発信はもとより、新生活様式に合った魅力ある企画作りを行いたい。
また、気温や湿度の関係もあり、感染が拡大している厳しい状況ではあるものの、ホテル経営者として、そしてホテリエとして、いつでも笑顔でお客さまをお迎えしたい。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 金谷ホテル株式会社代表取締役社長 平野政樹)