【シニアマイスター経営の知恵 115】変わる世界と変わらない本質 日本宿泊産業マネジメント技能協会会員・全日本社寺観光連盟専務理事 廣瀬崇之 


 歴史上、戦争やパンデミックなどの社会的危機は、人々の行動や需要のパターンの変化に大きな影響を及ぼしてきた。今なお収束の兆しが見えないコロナ禍ではどうだろうか。政府による積極的なビッグデータの活用、企業のリモートワーク、消費者のオンライン決済など、さまざまな分野でデジタル化が進められている。少なくとも社会はデジタル化へとかじを切り始めており、この流れはアフターコロナでも後戻りしないと考えられる。

 観光は裾野が広く、その多くが接触型ビジネスのため、コロナ禍により看過できないほどの打撃を受けている。政府の支援も受けながら今をしのいでいるわけだが、観光業は変化する環境や社会的な期待の高まりに対応し、逆境から抜け出すロードマップを描かなければならない。

 かつて経営危機に立たされた企業が何度も繰り返してきたように、ウィズコロナの状況下では、まず、業界全体として信頼感醸成のための施策を講じる必要があるだろう。

 次に、アフターコロナも見据えて求められるのはより統一されたデジタル化だ。政府はインバウンド拡大のためDMOを含め官民パートナーシップが核になる業界横断的なプラットフォームを推進してきた。世界的に移動が制限されている現下では、将来の潜在顧客へのアプローチはさらに統一・高度化されたデジタルプラットフォームの活用が必須となる。

 デジタル化の必要性について言及してきたが、忘れてはならないのは、変わる世界にも変わらない本質があるということだ。戦争やパンデミックを経てなお人々の旅への意欲は衰えず、交通手段の発達に伴い移動範囲も拡大してきた。私がお手伝いしている神社仏閣も幾多の危機を乗り越え千年以上の歴史を変わらず紡いできている。好奇心や幸福を求める人間の本能こそ絶対的に変わらない本質なのだ。

 時代の要請にしなやかに対応しながら変化し続け、変わらない本質をつかむ。

 持続可能な観光の大復活に向け、守るべきものを守り、変革にしっかりと取り組んでいきたい。

 (一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 全日本社寺観光連盟専務理事 文化観光リサーチ株式会社代表取締役 廣瀬崇之)
         

 
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