【コロナ新時代への提言】東京都旅館ホテル生活衛生同業組合理事長・ホテルかずさや社長 工藤哲夫氏


工藤氏

外部環境に対応できること

 思い返せば、この十数年は宿泊業のみならず日本経済も大きなうねりの中で進んできた。2008年~09年にはリーマンショックという、初めはアメリカの投資の破綻の話だと思っていたが、その影響は大きくアメリカを中心に金融システムの崩壊にまで発展し、日本全体が不況の嵐に見舞われた。

 その影響が少しずつ薄れてきたかと思いきや、11年3月11日の東日本大震災が発生したわけだ。名前の通りこの地震は日本全国というよりは関東、東北を中心とした東日本に大きな影響が出た災害だった。

 散々ボディーブローを受けた後は、インバウンドという大きなフォローの風が吹いた。アゲインストの風からフォローの風に代わり、久しぶりに客室単価や稼働率が毎年のように上がった。そもそも日本経済の中でも、右肩上がりの指標を示す産業は限られていて、異業種からも熱い視線を集めるようなった。

 それに追い打ちを掛けたのが2020東京オリンピックの決定だ。例えば銀座という街は地価が高く、それまでホテルの数は限られていたが、インバウンドの観光客が毎日バスを連ねて押し寄せて来るようになると新規ホテルの出店が目白押しになった。その現象は、東京中の繁華街におよび、ホテルラッシュ現象を生み出した。そしてそれだけには終わらず、マンションや貸しビルの部屋をインバウンド様に改築して民泊というものが出現した。オリンピックの開催やインバウンドの激増で国までが住宅宿泊事業法を立法化し、その推進にくみしたわけだ。

 このような状況を経営の側から見ると、谷底から山頂まで上がったり下がったりを繰り返しているわけだから、結果的には綱渡りの経営を強いられているようなものだ。

 私の経営するホテルもオリンピックの開催を受けて、旧館の取り壊しと新ホテルの建築を行ったわけだが、このような激変の環境を予想していたわけではない。結果として、コロナというシナリオのない要因に翻弄(ほんろう)されながら、この波を乗り越えていくしかないと思っている。

 金融システムが崩壊したわけでもなく、インフラが破綻したわけでもなく、パンデミックという今まで経験したことのない状況だが、コロナ後、自由になったらどこへ行きたいか、との質問に「日本へ行きたい」との回答が圧倒的に多いという話を聞くと、インバウンドの復活は間違いないと思う。

 アフターコロナの経営とは、ずばり「ジェットコースターのような外部環境に対応できること」ではないか思う。この先、何があるかは誰にも分からない。首都直下型地震があるかもしれないし、さらなる新型コロナが発生するかもしれない。宿の状況を熟知している経営者が、ハンドルを右に切ったり左に切りながら、フォローやアゲインストの風を感じながら進んでいくしかないと思う。

 
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