【アフターコロナ・ウィズコロナ時代の観光4】麻倉未稀氏 × 山崎まゆみ氏

  • 2020年10月13日

麻倉未稀さん

10月はピンクリボン月間 女性に優しい宿づくりを考える

 温泉エッセイストの山崎まゆみ氏をコーディネーターに、各界の著名人に聞くシリーズ企画「アフターコロナ・ウィズコロナ時代の観光」。4回目はシンガーソングライターで、乳がん検診の啓蒙(けいもう)活動を行う麻倉未稀氏に登場いただき、10月の「ピンクリボン月間」に合わせて乳がん患者を含めた女性に優しい、新しい時代の宿のサービスなどを語っていただいた。

乳がん検診の大切さを広くアピール 温泉でメンタルと体の両方救われる

麻倉未稀氏(シンガーソングライター)

 

 山崎 10月は乳がん検診の大切さを訴える「ピンクリボン月間」です。麻倉さんは地元の藤沢市(神奈川県)でピンクリボン運動に関わっておられますが、具体的にどんな活動を。

 麻倉 3年前に私自身が乳がんを患い、全摘出と再建手術を受けた経験から、翌年に「ピンクリボンふじさわ」を元「プリンセスプリンセス」のドラマーで地元出身の富田京子さんと立ち上げました。

 限られた人しか検診に行かない現実から、何とかしなければと、音楽を絡めたトークショーなどを行い、多くの人へアピールしています。

検診に行くことで早期に治療でき、もちろん一概には言えないのですが、命を落とすこともなくなります。今は医療の発展とともに良い薬ができています。患者さんに合わせた治療法も確立されています。

 乳がんの患者は、早期に手術など、治療をすれば、元気に暮らせる方が多いんですよ。私自身も元気です。がんイコール死と思っている方がたくさんいらっしゃいますが、乳がんで亡くなる率は下がっています。

 最近では、若い方で乳がんになる方が多いなと感じています。私はご相談を受けることが多いのですが、私と同じぐらいの年代だけでなく、若い方のご相談が多くなりました。死亡率は下がっていますが、罹患(りかん)する率は近年上がっており、私が罹患したときは11人に1人でしたが、今は9人に1人といわれています。

 仕事をガンガンやっている方だったりすると、健康診断で引っ掛かっても忙しいからと、再検査を後回しにすることが多いんです。私の場合は検診そのものを怠っていましたので、再検査と言われたときはどんなに忙しくても、必ず乳がんとは限りませんが、再検査を早めに受けてくださいとお話しします。

 山崎 麻倉さんはテレビ番組で乳がんが見つかったんですね。

 麻倉 そうです。でも実は、10何年か前の検査で乳血栓があったのですが、がんが見つからず、3年ぐらい定期的に検査に通っていたんです。精検でカテーテルを通したいと言われましたが、全身麻酔のため3日間の入院が必要とのこと。当時、休みを取るのが難しく、全身麻酔の時に挿管する管を外すときに喉に傷をつける可能性があり、1カ月は歌えなくなると聞いていたので、難しいことをお伝えすると、それでは3年検査に通ってくださいと。3年の間に乳血栓は治り、どの検査にも引っ掛からないので、がんはないのでしょうと言われましたが、テレビ番組の健康診断で見つかった二つで4.8センチくらいの腫瘍のほかにうっすらとふわっと画像に写っていたのが、10何年か前には写っていなかった腫瘍でした。

 山崎 ステージで言うと。

 麻倉 ステージ2ですが、サブタイプ、ルミナールAという、比較的穏やかなタイプで、ホルモン治療を10年続けています。

 山崎 麻倉さんとメッセージのやり取りをさせていただいて、印象的だったのが、温泉を紹介してほしいと言われたことです。術後、左腕がなかなか上がらない麻倉さんが、ドクターから「温泉も良いんですよ」と言われて、「どこか紹介していただけますか」と、相談をいただきました。

 麻倉 がんと告知されてから、仕事も先々入っていましたので、いろいろと決めなければならないことが出てきました。脳をフル回転させたので、体だけでなく、気持ちの上でも休みたかったのだと思います。

 山崎 だから温泉だと。

 麻倉 はい。温泉に漬かるとほっとするし、ゆっくり寝られますよね。ゆったりとして、何も考えないような時間がほしかったのだと思います。

 山崎 私も子宮内膜症で手術を経験して、メンタルがかなり弱ったことがありました。でも、手術後に初めて温泉に入ったときの多幸感といったら…。あのときの瞬間が今も忘れられません。

 メンタルと体。私も温泉によって両方が救われました。

 

傷を負った人だけで大浴場を貸し切りたい 旅館のバリアフリー、個性化は時代の要請

対談は東京の観光経済新聞社で9月4日に実施

 

 山崎 旅館・ホテルのオーナーにリクエストしたいことはありますか。

 麻倉 乳がんの患者さんは、皆さんがそうではないと思いますが、大浴場に行くことをちゅうちょしてしまいます。私はそういう性格ではないと思っていたのですが、意外にそうでした。お子さんがいたりすると、「何でおばちゃん、ここに傷があるの」と言われて、お母さんが「そんなとこ見ちゃだめよ」と言ったりするのが逆に傷つくんです。なので、貸し切り状態の中で入りたいな、と思ったりします。

 山崎 大浴場の貸し切りですね。

 麻倉 (笑い)。本音です。

 山崎 でも、術後の方だけの貸し切りができるかもしれませんね。

 麻倉 ほかのお客さんを気にせずに、心置きなく羽目を外して、外し過ぎるのはいけませんが、そういう機会があればいいですね。そこに医師もいらして、話を聞けるという機会が1年に1回や2回あればいいと思います。

 露天風呂付きの部屋もいいのですが、少しお高くて、治療費も結構かかっていますので、二の足を踏んでしまいます。

 山崎 私はお風呂に入るのが仕事のようなものですが、それでも傷を負った直後は隠したくなりました。

 麻倉 胸を全摘している方などのために、胸を隠せるものを用意しているところもありますが、余計に気にしてしまって、あまり使わないという方が多いです。やはり貸し切りが一番ですね。

 それと、脱衣所が別だったり、脱衣所にちょっとカーテンが引けるなどの場所があればうれしいですね。

 山崎 私は、手術後初めてのときは、ほかのお客さんの夕食の時間を狙って入りました。

 麻倉 私も同じです(笑い)。

 あまり遅いと旅館の方が入ってくることがあるそうで、隙間の時間を狙っていました。

 山崎 チェックイン時間の前に、少しの時間貸し切ることができませんかね。

 麻倉 それがあればうれしいですね。

 あとは大浴場がバリアフリーになっていれば、なおうれしいです。抗がん剤治療をしている方に、手や足のしびれがある方がいます。足元の感覚が鈍いので、滑るかもと怖がっています。

 山崎 滑ったときに自分で対処できない人もいますから、それは大切ですね。

 麻倉 私も手術後は滑らないように、何かにつかまりながら入る感じでした。

 山崎 お風呂以外のリクエストはありますか。

 麻倉 がん患者は意外にわがままなので(笑い)。

 理学療法士の方がいらして、腕が上がらないときにはマッサージをしてもらうとか。抗がん剤治療をすると味覚が戻りづらいことがあるので、食事のときにそういうことに対応してくださる方がいらっしゃるとか。

 山崎 旅館も画一的なスタイルが多い中で、具体的にこんなお客さまに来てほしいとか、個性を出すべきだと思うんです。これは時代の要請だと思います。麻倉さんのお話を聞いて、病院と提携したり、ドクターに監修してもらったりとか、そんな旅館もありだと思いました。

 麻倉 あとちょっと気になるのが、旅館さんによっては、食事どころの前を通ってお風呂に行かなければならないところがありますよね。

 山崎 大型旅館の、居酒屋のようなところですか。

 麻倉 これからお風呂!と思っているところにカラオケの音が聞こえてきて、あれっと(笑い)。

 山崎 雰囲気は大事ですね(笑い)。

 麻倉 でも私、「THE夜もヒッパレ!」というテレビ番組で、庄野真代さんと「Onsens(オンセンズ)」というユニットを組んでいたんです。真代さんと楽屋が一緒だったんですが、その楽屋が温泉旅館のお部屋みたいで(笑い)。そんな話を本番でしたら、2人でユニットを作ってユニット名を決めましょうとなって、募集したらOnsensと(笑い)。

 「ショーをやりませんか」と温泉旅館からお誘いがあって、2人で結構いろんなところに行かせていただきました。ショーが終わったあとに「大浴場にお入りになりたいですよね」と聞かれて、「ぜひ」「もちろんです」と(笑い)。

 山崎 今は麻倉さんのライブとともに、乳がん検診啓蒙のトークショーを温泉地でできたらいいですね。

 麻倉 それはぜひ、お願いしたいですね。

 

コーディネーター 山崎まゆみ氏(温泉エッセイスト)

 

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