標高700メートルの高原リゾート
雲仙温泉(長崎県雲仙市)は九州・島原半島のほぼ中央、標高約700メートルにある高原リゾート。温泉は開湯1300年といわれる古い歴史を持ち、明治時代から避暑地、保養地として人気を集めるほか、1934年には日本第1号の国立公園として指定を受けている。
地中から高温の温泉と噴気が激しく噴出する「雲仙地獄」がこの地を代表する観光スポットだ。周囲に強い硫黄臭が立ち込め、湯けむりがもうもうと噴出するさまは、まさに地獄そのもの。地獄の景色を一望する「八万地獄展望所」、噴気活動が活発な「お糸地獄」「大叫喚地獄」などが格好の撮影スポットだ。一帯は散策路が整備されているほか、足を置くと地熱や噴気を体感できる「足蒸し」、地獄の蒸気を使って蒸し上げる名物の温泉たまごを販売する「雲仙地獄工房」などの休憩どころもある。
雲仙地獄
雲仙地獄のエネルギー源は、長崎半島東岸と島原半島西岸に囲まれた橘湾の海底のマグマだまりと考えられている。このマグマだまりから発生した高温高圧のガスは、岩盤の裂け目を通って上昇し、その途中で化学反応を起こしていったん高温熱水となる。その熱水の沸騰により生じたガスが激しい噴気となって現れているという。
雲仙の温泉は、このガスと周りの山からの地下水が混ざり合って生成されたもの。泉質は硫酸酸性の硫黄泉で、強い酸性を示す。最高温度98度。主成分は鉄イオン、アルミニウムイオン、硫酸イオンで、リウマチ、糖尿病、皮膚病に特に効果があるとされる。
地獄の熱を利用して温水をつくる「かんつけ」はこの地ならではのシステム。温泉街の旅館・ホテルが利用し、自然を活用したボイラーいらずのエコなシステムとして古くから定着している。
温泉街に近い仁田峠は、春にミヤマキリシマ、夏に新緑、秋に紅葉、冬に霧氷と、四季折々の自然を感じられる人気のスポット。峠までは全長11・3キロのスカイラインが通じ、途中スギやヒノキの樹林を縫い、有明海、橘湾の海洋美や九重連山の展望を楽しみながら快適なドライブができる。峠の駐車場からは標高1333メートルの妙見岳山頂を結ぶロープウエーが運行。半島と海の雄大な景色を一望する”空の散歩”を楽しめる。
雲仙温泉全景
火山による肥沃な土地に恵まれた雲仙は、食の宝庫でもある。多種多様な農産物が作られ、山間部では酪農が盛ん。温泉の蒸気を使った蒸し料理など、この地ならではの食を楽しめる。古くから多くの外国人が避暑で訪れ、かつ丼にデミグラスソースをかけた丼料理を食べていたという歴史にならい、新たな名物「雲仙ハヤシ」が近年、売り出されている。