さる10月16日に東京都渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて「澤田知可子Anniversary35 Beautiful AGE」が開催されました。この日は、澤田さんと親交の深い麻倉未稀さん、藤田恵美さんというお2人のスペシャルゲストも登場し、いつもに増して華やかなステージでした。
かねてよりお付き合いのある澤田さんの記念すべきコンサートということで行きましたが、澤田さんの万感の思いが会場を優しく包み込みました。澤田さんの名曲「幸せになろう」でまず泣き、「会いたい」では号泣し、澤田さんのトークに大笑いして、ゲストとの掛け合いでほほえむ。さまざまな感情を引き出す、まさに表現の練達者であるアーティストが作り出した空間でした。涙を流すことで浄化されるのですね。澤田さんの歌声でそれを体感しました。すっきりしました。
澤田さんが歩んだ35年という年月は、自分自身のその歳月を重ね合わせることにもなりました。
澤田さんの代表曲「会いたい」を聴きながら、その当時の自分が蘇る。また藤田さんが語るように歌われた「ひだまりの詩」には、昨年亡くなった父を重ね、止めどない涙があふれました。
今年デビュー40周年を迎えた麻倉未稀さんが熱唱される「ヒーロー」は圧巻。麻倉さんといえば、2020年10月に対談させていただき、最愛のお父さまを見送ったご経験、そして乳がんの闘病生活を率直に語っていただきました。それらを全て乗り越えて、「ヒーロー」を歌われる姿に心動かされたのです。澤田さんからの「麻倉未稀さんにとっての『ヒーロー』とは?」という問いに、「私の人生そのものです」と返した言葉は、本当にその通りなのでしょう。
ステージで燦々(さんざん)と輝く澤田知可子さん、麻倉未稀さん、藤田恵美さんのお姿、歌、トーク、全てに体現されていたものがありました。それは経験を重ね、年を経ることは決してネガティブではなく、一つの境地に立てるということです。私がこれから行く道を示してくださったようにも受け取れました。
つまり、このコンサートのテーマである「ビューティフルエイジ」そのものだったのです。その意味が分かる私も、年を重ねたということ―。
その時、不思議な共通点に気付いたのです。
温泉旅館の女将の皆さんはいつも「うちにお泊まりいただいて、ふと足を止めて、人生を振り返る。そして明日への活力にしてほしい」とおっしゃいます。
澤田さんのコンサートがもたらす感興もまたそっくり同じなのです。相性が良いのでしょうか。
ちなみに澤田知可子さんは、これまで「沢田」表記でしたが、「澤田」に変えました。長年パートナーとして、最も近くで支え、共に歩んできた小野澤篤さんの「澤」の字を頂いたそうです。ほっこりした、いい話だな。
澤田知可子さんと小野澤篤さんのご夫妻リサイタル&絶妙なトークショー、もし温泉旅館で開催したらと…、すごく楽しそう。お客さんにも夫婦で参加してもらい、歌とトークを聴きながら、夫婦で過ごしてきた歳月を重ねてもらうのです。とっても心に残る体験になるでしょう。さぞかしリラックスできて、元気が出るだろうなぁ。
―なんて、つらつらと思っていたら、なんと12月12日に箱根の湯本富士屋ホテルで、麻倉未稀さんと澤田知可子さんがクリスマスディナーショーを行うとのこと。こちらも楽しみですね!
(温泉エッセイスト)