持続可能な観光を推進 大阪・関西万博に出展
――ゴメス参事官は、コロンビア大使館の商務参事官とプロコロンビア日本事務所代表を兼務されている。プロコロンビアとはどのような組織か。
「日本でいえばJETRO(日本貿易振興機構)とJNTO(日本政府観光局)を合わせたような組織になる。本国の現在のトップは観光分野の出身だ」
――コロナ禍前後における日本からコロンビアへの観光客数の推移は。
「2019年7506人、20年1694人、21年1116人、22年3530人、23年4998人となっている。ようやく回復が軌道に乗ってきた」
――他のアジア諸国からの観光客の回復状況は。
「22年と23年の数字で申し上げると、中国が8906人から1万6966人、インドが8564人から1万1818人、フィリピンが7467人から1万2146人、韓国が4686人から4998人。その次が日本だ。23年は世界中から587万人がコロンビアを訪れた」
――私個人の映画の見過ぎなのかもしれないが、コロンビアの治安に不安を抱き、そのイメージから訪問を躊躇(ちゅうちょ)する観光客もいるのでは。
「新政権の発足により治安は大幅に改善している。2023年末の祝賀期間中の殺人率は前年同期比41%減、23年8~9月の誘拐と恐喝の発生率は前年同期比18%減、23年の警察による暴力事件数は前年同期比58%減となっている」
――コロンビアが観光政策で重視していることは。
「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)だ。国連世界観光機関(UNツーリズム)は、持続可能な観光を『旅行者、観光関連産業、自然環境、地域社会の需要を満たしつつ、経済面・社会面・環境面の影響も十分考慮に入れた観光』と定義している。また、(1)持続可能な観光開発には、関係するすべての利害関係者が情報を得て参加することと、幅広い参加と合意形成を確保するための強力な政治的リーダーシップが必要(2)持続可能な観光の実現は継続的なプロセスであり、影響を常にモニタリングし、必要な場合には予防的・是正的措置を導入する必要がある―と明記されている」
――コロンビアは景観の美しさや生態系の豊かさから「美を生きる国」とも呼ばれている。
「UNツーリズム内には、持続可能な観光地域づくりネットワーク(INSTO=International Network of Sustainable Tourism Observatories)という組織がある。これは、観光地単位で持続可能な観光の発展を指標に基づいてもモニタリングを行う観光地のネットワークで、24年3月時点で44地域が加入している。内訳は中国8地域、スペイン6地域、インドネシア5地域、ポルトガル4地域、メキシコ4地域、カナダ2地域、コロンビア2地域などとなっている。オブザーバトリー同士のネットワークを通じた情報共有・学び合いの機会を提供していただいている」
――コロンビアからINSTOに加盟している2地域とはどこか。
「ボコダが22年、カリが23年に加盟した。日本からは岐阜県が23年に加盟したと聞いている。ボコダはコロンビアの首都で、アンデス山脈の盆地、標高2640メートルに位置する。1640年に建てられたサン・フランシスコ寺院、スペイン開拓前のコロンビア先住民たちの金細工3万点以上を展示する黄金博物館などが観光スポットとして有名。カリはボコダ、メデジンに続いてコロンビアで3番目に人口が多い都市。1536年にスペイン人によって創立されたアメリカ大陸の中でも最も古い都市のひとつだ。COP16(国連生物多様性条約締約国会議)が今年10月21日から11月1日までカリで開催される。190を超える代表団が、生物多様性の保護に焦点を当てる協定を結ぶために集まる」
――地域社会に根差した価値観、商品、ライフスタイルを維持・促進し、経済、社会、環境のあらゆる側面で持続可能な開発目標(SDGs)に沿って取り組む農山漁村観光地を表彰するUNツーリズムの「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」にも選ばれている。
「23年に『チョアチ』『フィランディア』『サパトカ』の3都市が選れた」
――大阪・関西万博にも出展する。
「日本ではまだあまり知られていないコロンビアの魅力を存分に伝えられるように準備を進めている」
――日本の温泉に行かれたことは。
「日本の温泉の大ファンで、特に北海道の温泉が好きだ」
――好きな日本食は。
「もつ鍋が好きだ」
コロンビア大使館商務参事官 ゴメス・フアン・カミロ氏
【聞き手・江口英一】