新型コロナウイルス感染症の広がりで大きな打撃を受ける旅行業界。日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長=写真=は、10日に発行されたJATA会報誌「じゃたこみ」4月号で、会員旅行会社の経営者に向けてメッセージを発信。状況打開のためJATAが政府や与党に働き掛けを行っていることや、前例のない大規模な国内観光需要喚起キャンペーンが実施される予定であることなどを説明し、「この事態を旅行業界一丸となって乗り切ろう」と訴えている。メッセージの全文を掲載する。
前例のない試練
現在、国内旅行は1億総自粛の影響を受け、海外旅行、インバウンドは国際間移動が制限され、3月、4月の先行予約は前年比30%前後に低迷しています(3月13日に主要10社聞き取り)。さらに、日々悪化している状態です。
旅行消費総額は昨年毎月2兆円以上あったことからすると、前年の3割の需要しかないということは、日本全体では1.5兆円の旅行消費が毎月消えていくという大被害となります。直接の旅行消費だけではなく、宿泊施設に提供する食材など地域の一次産業、二次産業へも甚大な影響があります。
政府への働きかけ
この状況を打開するためにJATAでは政府や与党に働きかけています。まず第一には当面の企業存続のための支援策です。さらに次に自粛の緩和、そして大規模な需要回復策の実施など左記の通りです。
1 雇用調整助成金の助成率の引き上げや支給限度日数の延長
2 感染予防策を業界で共有することを条件とした自粛の緩和
3 修学旅行の延期での実施や取消料の補填(ほてん)
4 前例のない大規模な観光需要喚起キャンペーンの実施
5 国際交流の復活
日本の取り組みを紹介した上で、出国時の検温、健康チェック体制を作り、安心して移動できる方策を日本から提案すること。これは、JATAからもUNWTO、WTTCなど国際機関に働きかけます。
経営者の皆さまへ
以上のような働きかけによって、事態は刻々と変化しています。
まず、経営者の皆さまにお願いしたいのは、何が何でも企業を存続させるという施策を打っていただきたい。資金繰りのための融資や雇用調整助成金などの制度をフルに活用してください。各社のお客さまや経営資源を見極め、固めの計画を作り、それに応じた資金計画、休暇計画を作ってください。
同時に、社員のモチベーションをいかに保つかに心を配ってください。休みの取らせ方にしても、しっかりと話し合い、納得の上で進めてください。消化できなかった休暇にあてるだけではなく自己研鑽(けんさん)や次の一手を練るための時間とすることも考えてください。
次に、大規模キャンペーンを待つことなく、今すぐ、しっかりとした感染防止策をとりながら、お客さまに安心して旅行やイベントを楽しんでいただきましょう。対策チェックリストやイベント、ツアーの実施例を掲載していますので、参考にしてください。パートナー企業とも話し合い、知恵を絞ってお客さまに提案しましょう。
大規模キャンペーンはまず国内で前例のない規模で実施される予定です。しっかり対応し、取り返し、復活するための体制作りを進めてください。
一方、海外旅行やインバウンドについては、まず安心して交流できる仕組みを作り、その上で、国や地域ごとに双方向で復活させるキャンペーンとしていきたいと思います。このような時こそ相手との連絡を絶やさないようにしてください。
刻々と変化する情勢はJATAコロナウイルス感染症対策ホームページなどを通じてお伝えします。この事態を旅行業界一丸となって乗り切りましょう!
田川会長