「危険な家主不在型民泊」東京都旅組の報告書で浮き彫り


部屋の前に取り付けられたダイヤル式キーボックス。宿泊者はここで鍵を受け取る(報告書から)

 東京都ホテル旅館生活衛生同業組合(齊藤源久理事長)が今春、「家主不在型民泊の実状と危険性について」と題した報告書を作成、関係各所に配布している。多くが違法と見られるマンションの1室などを利用した民泊営業の実態を民間の調査機関「民泊バスターズ」に依頼して調査したもの。夜中の騒音やルールを守らないごみ出しなど、問題点が浮き彫りになっている。

 東京都大田区のマンション。住民が隣の部屋の異変に気付いたのが昨年の夏ごろだった。その部屋だけ不自然な外鍵が付いており、毎回違う外国人がキャリーバッグを引いて部屋に入っていく。住民は民泊と確信した。

 「民泊宿泊者の話し声が非常にうるさくて眠れません。とにかく声が大きいのと、住んでいる部屋の壁が薄いため、会話が筒抜けになっています。その会話も深夜2時くらいまで。ひどい時は明け方まで続き、本当に苦労しています。ドアの閉め方もひどくてすごく響きます」。

 「ごみの散乱も結構目立ちます。本来のごみ置き場以外にも住民が一時的に置いておくごみ箱があるのですが、宿泊者たちはそこに入りきらない量のごみを捨てています。当然、入りきらないので、周りに散乱していることが多いです。衛生上も見た目も良くありませんし、カラスが来てさらに荒らします」。

 東京都豊島区のマンションでも、民泊宿泊者の騒音とごみ出しに悩まされている。

 「違法民泊部屋の隣に住んでいるのですが、話し声がうるさくてとても気になります。キャリーバッグの音もかなり響きますし、出入りが多いことにも困っています。ごみは収集日以外にも平気で捨てますし、当然分別などはせずに缶や瓶も平気で捨てていきます」。

 住民は騒音、ごみ出し以外にもさまざまな生活不安を指摘。

 「訳の分からない外国人と同じエレベーターに乗るのも不安です。部屋を間違えてうちに入ろうとしたことも一度や二度ではありません。違法民泊によって、平穏な生活が崩れてしまいました。元の生活に早く戻りたいです」。

 別のマンションの住民もこう話す。

 「騒音もひどいのですが、それよりも嫌なことは夜に廊下でたむろしていることです。なんかナンパをするような感じで話しかけられてとても怖いです。ほとんどの外国人がお酒を飲んで酔っ払っているのでタチが悪いです。いつか犯罪に発展するのではないかと思います」。

 「何回かは私の部屋と違法民泊の部屋を間違えて開けようとしたり、無駄なノックもされました。その部屋の間違いは夜中が多くて、ろくに寝られないことも多かったです。私だけでなく、近所の住民の方たちも大迷惑しています。一刻も早く違法民泊を取り締まってほしいです」。

   ◇   ◇

 「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が先の通常国会で成立、来年年初にも施行の運びだ。現在は一部の国家戦略特区などで認められている民泊営業が、年間180日以下の制限付きながら全国で可能となる。

 ただ年間180日の上限は、都道府県や保健所設置市・特別区の条例により、さらに引き下げることが可能だ。
 地域住民の生活不安や過当競争を危惧する旅館業界は、民泊の年間営業日数や営業できる場所をさらに制限する条例を制定するよう、各自治体に働き掛ける。

 東京都旅組は今回の報告書を特別区長や都議会議員、都の関係部署などに配布。民泊の実態を正しく理解するよう求めている。報告書は若干の残部があり、同旅組では希望があれば他の旅組などに配布するとしている。

家主不在型民泊の実状と危険性について (完成原本)

 
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