【食と観光 日本の新たな魅力57】松よりも梅が特上料理では 山上徹


 梅は中国原産のバラ科の落葉樹で、中国文化とともに奈良時代に薬木として伝来。梅の花言葉は高潔・忠実・忍耐だ。

 花の代表格といえば桜を思い出す。しかし、平安時代の万葉集では、萩が約140首、次に梅で約100首、桜は約40首という数字のように桜よりも、梅が多いという。

 901年、菅原道真が大宰府へ左遷され、旅立の際、中庭の梅の花に別れを惜しみ「東風(こち)吹かば にほひ をこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と詠んだ。梅を愛でた道真を祀る京都の北野天満宮の社紋は梅鉢だ。

 梅は眺めて美しく、香りも良い。とくに、梅は食・薬用として日本人の生活と深く関わってきた。高度成長以前、ご飯に梅干入りの日の丸弁当こそが苦難に耐え、生活を支えた日本人のパワーの源だった。

 梅干を想像するだけでも唾液が出るが、梅の有機酸は食べ物・血液・水の毒という三毒の悪性細菌を断つ効能がある。梅は整腸、食欲増進や殺菌などにも抜群の効果。

 中国では画題として、松竹梅が「歳寒の三友(さいかんのさんゆう)」と称してセットで描かれる。松・竹は寒い冬でも青々しく、梅は寒い時期でも咲き、松竹梅は慶事のシンボルだ。

 松竹梅は本来、明確な上下の序列はなく同格だ。だが、料理では松・竹・梅(特上・上・並)の順位で捉えがち。松は一般的に特上で高額だ。しかし、梅の歴史や効能を考えれば、逆に、梅が特上のランクでも、何らおかしくないはず。

(梅花女子大学教授)

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