【体験型観光が日本を変える52】人材育成の場が不可欠 藤澤安良


 神奈川県座間市で9人もの若い男女を殺害したとみられる男の供述によると、SNSを利用し、知り合ったことが明らかになった。インターネット上には情報が氾濫している。どれが正しく、どれが誤りなのか、どれが有用で、どれが危ないのか、取捨選択するには人間力が求められることになる。

 さらには、案内や接客対応までするAI(人工知能)を搭載したロボット、いろいろな調べ物に応えてくれるAIスピーカー、自動車の自動運転など、AIの普及が目覚ましい。人間の思考力や記憶力、技や労力がいらなくなる。それは同時に、AIロボットに職場を奪われることにもなる。テレビは4Kや8Kと画像が良くなるが、人間の3K職場はどんどん敬遠される。そんな中、3Kの仕事が機械化、ロボット化され、大いに助かっている分野も少なくない。

 自動車産業での品質検査の不正は、リコールや販売減少など、極めて大きい影響を及ぼすことになった。機械やロボットを使う人間に安全対策、危機管理、法令遵守の真っ当な心がなかったら、AIロボットに注意され、捕らえられることになりかねない。

 自動化された機械やロボットが増えれば増えるほど、当然、人と人のコミュニケーションの機会が減少する。人間関係構築能力が育たない。しかし、まだ人間にしかできない仕事がある。人間だからこそ納得できる仕事がある。人間との交流があってこそ、癒やされ、感動し、心高まることがある。旅は映像の世界で済ますわけにはいかない。テレビなどのメディアの発達は、お茶の間で「見る」や「聞く」を可能にした。例えば、古都の寺院の歴史や文化は現地でただ見て回る程度なら、教養番組や旅行番組が取り上げる特集の方が、深く掘り下げられ、よく理解できる。

 しかし、現場に行ってこそ、その場の気候風土に触れることになる。食べるものも、飲むものも現場で試したい。人にも出会える。AIで便利になるが、すべての満足を得られるわけではない。つまり、旅は現地でなければできないもの、味わえないもの、触れられないものなど、五感から捉える体験で理解を深めたいと考えるようになる。

 忘れてはならないのがコミュニケーションと交流である。よく体験交流のプログラムの磨き上げという言葉が使われる。プログラム化とは、お客に対する安全対策、危機管理、法令遵守の徹底と、感動と心の高まりを与える手法を手順にすることである。

 さらには、その進行を任されているのがインストラクターである。人と人の交流であることから、旅人との人間関係構築能力が望まれる。それがうまくできなければ、感動や心の高まりを与えられない。商品は素材そのものの差よりも、関わる人の差と言っても過言ではない。それらの人々の志や熱意が勝負である。しかしながら、生まれながらのインストラクターは存在しない。人材育成の場が不可欠である。磨けるのは人間だけである。

 
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