【体験型観光が日本を変える20】震災6年で考えるべきこと 藤澤安良


 東日本大震災の発生から6年が経ったが、報道によると、避難生活をされている人が12万3千人に上っており、今なおプレハブ仮設住宅での暮らしを余儀なくされている被災者が3万5千人もおられる。被災地は復興に向かって歩みを進めているが、その道のりは遠い。

 とりわけ、福島第1原発の廃炉に向けた作業は、強い放射線がその行く手を阻み、困難を極めている。40年ともそれ以上とも言われるとてつもない長い時間を要するほか、その費用が国家予算の4分の1に迫る22兆円と試算されている。過去の歴史から試算内に収まった印象はないことからも、費用はもっとふくらむのではないかと思うのは私だけではないはずである。

 そんな中、福島から全国各地に避難している家庭の子どもたちにも苦難が降りかかる。転向した学校で、ばい菌などと言われ、いじめにより自殺した子どもがいたことは記憶に新しい。それは、まれなることかと思っていたが、差別や偏見や誤解から、いじめを受けている児童生徒が少なくないことが、テレビ番組の特集などで明らかになっている。

 学校で起こっている出来事が児童生徒や家族のせいではなく、東日本大震災であり、原発の事故が原因であることがはっきりしているのに、それを学校や教員で未然に防いだり、解決ができなくては情けない限りである。その問題に立ち向かう当事者意識が足りないし、仕事への使命感が欠如している。教師の社会性、人間力、教育力の低下は著しい。中には、生徒より態度が悪いということもしばしば聞く。

 残念ながら、子どもを取り巻く環境は家庭でも厳しくなっている。先ごろの警察庁の発表によると、虐待を受けた疑いがある子ども(18歳未満)が5万人を突破した。さらには、生命の危険があり警察が保護した子どもも過去最高の3521人に上った。また、保護者が子どもの前で配偶者に暴力を振るうなどの面前ドメスティックバイオレンス(DV)も約2万5千人に及んだ。そして、残念ながら67人もの子どもが亡くなった。

 学校や教師が守れない上に、親が子を守らずして誰が守るのか、人としてあり様を再確認すべき時である。6年前の東日本大震災後に、多くの家族を亡くした悲しみから、命の尊さや家族や親子の大切さを共有し、その苦難を乗り越えるために日本が一つなったはずであった。

 児童生徒の人間関係構築能力向上やキャリア教育の一環などとして、教育旅行での体験学習の導入は常識であるが、その現場で傍観者として見ている教員も少なくない。企業研修にも活用されつつある体験プログラムは、当然ながら教員研修にも対応でき、体験教育を通して、生徒以上に人間性を高めなければならない。

 家族も、格差や貧困が広がる中、豪華な旅ではなくとも、ささやかな共通体験でその絆を深める旅をしてほしいものである。

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