【体験型観光が日本を変える15】地元の食、酒に魅力 藤澤安良


 東京都の豊洲市場への移転問題は、地下水が環境基準を大幅に上回る数値であったことから、先行きが見えない厳しい状況がある。一方で築地市場界隈は、手狭で老朽化などと専門的には課題があるのだろうが、外国人も多く、にぎわいを見せている。

 地方から上京した知人と、築地の和食料理店で食事をした。予約が取れない人気店らしく、キャンセル待ちで席が取れたという。接客接遇は微に入り細に入り気が利いている。メニューも東京では珍しいのであろう。全国の選りすぐりの魚介類や旬の山野菜が名を連ねる。

 しかし、全国各地の農山漁村が活動の場で、地産地消の食事、生産現場、地方の店の価格も知る私には特段珍しいものはなく、驚くべきはその価格であった。それは生産地や漁獲地の店の約4倍の価格であり、注文を躊躇してしまうことになる。しかしそれが、接客はもちろん場所や店の雰囲気、料理のクオリティからしても、決して高いと感じるわけではない。つまりは、都会ではその価格でも予約が取りにくいほどのマーケットである。

 過日、14年にわたってガイド、インストラクターの研修会の講師をしている北海道標津町を訪ねた。白銀の雄大な大地は、その素晴らしい景観に加えて、オジロワシなどの猛禽類の野鳥が見られ、エゾシカも雪原にエサを求めて群れをなし、まもなく流氷が接岸する。外気温が温かいと言っても氷点下10度。その厳しくも豊かな環境は海でも豊富な魚介類が獲れる。

 当地での会食のメニューは、すべて地元産のイクラ、ホタテ、ウニ、ホッキ、サケのトキシラズ、ソイ、イカなどの刺し身に生寿司、北海シマエビ、宗八カレイ、マホッケ、氷下魚にサケのハラスの焼き物、さらに、氷頭なます、めふん、いずしとサケの珍味が並ぶ、ビールも北海道限定のサッポロクラシック、日本酒は北の勝の純米吟醸と、地産地消を徹底した贅沢三昧の食事が当たり前のように並ぶ。まずいものなどあるはずもなく、本州から同行した知人は感嘆の連続である。

 過日は、有名な酒蔵がたくさんある某県を訪ね、ホテルからほど近い居酒屋で会食をしたが、地酒を楽しみにしていたメンバーが、大手の著名な銘柄しか置いていないとのことで落胆していた。訪日外国人にも、海外でも人気が上がっている日本酒は輸出量が増えている。酒の地産地消も、宿泊業や飲食業では当然である。地方の宿泊施設や飲食店は変わらなくてはならない。全国いずれの生産地でも、鮮度の確かさ、流通しない珍味があり、有利なはずである。

 全国各地域が、お国自慢や郷土の誇りを持ち、さらには食、酒が観光誘客の目玉となることを自覚し、商品化して大いにアピールしなければならない。どこに行くのか、予想を超える動きを見せる外国人観光客に対しては、爆買いから体験型観光への対応に加え、観光立国としてメニューの多国語表記や地産地消の徹底が必須条件となる。

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