夏休みの国内旅行、入り込みは前年並みか 


「出足遅いが8月は予約好調」お盆の最大9連休に期待

 観光経済新聞社はこのほど、大手旅行会社と温泉・観光地に夏休み期間(7月下旬~8月末)の国内旅行と宿泊の予約状況を聞いた。最大10連休というゴールデンウイークの反動が危惧されたが、キャンペーンの開催地やドラマの舞台を中心に好調の地域もあり、お盆休みが最大9連休となる日並びの良さも手伝い、全体的にほぼ前年並みの入り込みとなりそうだ。

●旅行会社

 JTBによると、今年の夏休み(7月15日~8月31日)の国内旅行人数は7435万人で、前年比0.2%減と推計。
国内旅行の予約状況を見ると、出発日のピークは8月11日、12日が多く、人気の旅行先は1位沖縄、2位北海道、3位関西(ユニバーサルスタジオジャパン含む)、4位東京(東京ディズニーリゾート含む)、5位九州となっている。令和ゆかりの地、伊勢への旅行も人気という。

 KNT―CTホールディングスは、グループの近畿日本ツーリスト(KNT)、クラブツーリズム(CT)とも全体としては若干の前年同期割れだが、KNTはハウステンボスを含む九州方面と令和改元関連の伊勢志摩方面、CTは北海道方面が好調だ。

 日本旅行はデスティネーションキャンペーンが開催中の熊本と、「涼しい」草津温泉(群馬県)などが人気。
国内旅行商品「赤い風船」は、7、8月は現時点で全体的にほぼ前年並みだが、熊本が前年同期比173%(8月)と好調。知床(北海道)での滞在型ツアー「涼しい夏 知床で過ごす5日間」も好調で、夏休み期間中は全て催行が決定した。

 東武トップツアーズの夏休みの国内旅行予約は現時点で対前年100%。「6月10日以降、対前年を下回って推移していたが、ようやく昨年を超えた。大型連休の反動で夏の受注が低迷、夏の賞与が支給されたら動き出す、と言われていたことが実証された形」(同社)。

 売れ筋は東北(対前年111%)、群馬(115%)、中部(120%)、沖縄(113%)。「相当前から計画を立てるような旅行は好調、気軽に行けるエリアは不調という傾向」(同)。

 「令和元年に関連する近畿の万葉集ゆかりの地や関東の皇居など、歴史的建造物を訪れる旅が人気」というのは阪急交通社。7月上旬段階での予約数(人数ベース)は全体で前年同期比5%増となっている。
このほか、東北は大曲の花火や夏祭り、白神山地など日本海沿岸を巡るコースが人気を博しており、甲信越では涼しい上高地が好調だ。
 
「全国各地のリゾートで暮らすように過ごす『長期滞在の旅』も拡大している」という。

●温泉・観光地

 NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」の舞台、北海道の十勝エリア。帯広観光コンベンション協会では「ドラマを見たという旅行者が全国からお越しになっている。帯広駅ビルで開催中の『なつぞら』展に立ち寄られる観光客が多く、問い合わせには、ドラマの舞台を体感できるようなスポットをご案内している。夏の入り込みにも期待が大きい」と話す。

 同協会によると、宿泊施設や観光施設の入り込み、飲食店の売り上げなどにもドラマ効果も表れているようだという。放送終了後も集客効果が持続するような取り組みも検討中だ。

 北海道の阿寒湖温泉では、体験型観光コンテンツ「阿寒湖の森ナイトウォーク カムイルミナ」が5日にスタート。国立公園の夜の森を舞台に、デジタル技術などを駆使した演出でアイヌ伝説の世界が体感できるアドベンチャーツーリズムのプログラム。

 阿寒観光協会まちづくり推進機構では「カムイルミナへの注目度は高い。国内はもとより、台湾の旅行会社などからも問い合わせがある。チケットは、旅館・ホテルのチェックイン後の購入が多いとみられ、販売状況はつかめないが、今期(11月10日まで)の来場者数は6万人を目指している。夏休みに入って、入り込みが加速するものと期待している」と話す。

 6月18日に山形県沖を震源とする地震が起き、宿泊キャンセルなどの影響を受けた山形県庄内地方、新潟県下越地方。観光需要の喚起に向けて官民を挙げた山形・新潟応援キャンペーンが始まり、JRや航空会社が応援商品などを設定したほか、国費による宿泊料の割引支援も実施される。

 山形県鶴岡市のあつみ温泉では、1日までに全7旅館が営業を再開。鶴岡市商工観光部観光物産課では「宿泊料3千円を割り引く『あつみ温泉GENKI割』の利用が1日に始まったが、さらに認知度を上げ、集客に生かしたい。市内の他の温泉地も集客に取り組んでいる。風評を払拭(ふっしょく)し、8、9月の観光を盛り上げ、10月開幕の新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーンにつなげたい」と話す。

 群馬県草津町の草津温泉旅館協同組合は「昨年は噴火の影響もあり、今年と比較はできないが、おととしと比べると7月(の予約状況)はやや動きが鈍い。長梅雨の影響もあるかと思う。ただ、8月は順調に入っており、安心している」と話す。

 8月は12日が「山の日」の振り替え休日となり、お盆休みは9連休となる人もいることから、「追い風になる可能性も」と指摘する。熱気球搭乗体験(8月1日~9月1日)や湯畑大道芸(8月3日~9月1日)などイベント情報を発信し、集客増を狙う。

 飛騨・高山観光コンベンション協会(岐阜県高山市)によると、7月の予約状況は前年をやや下回っているが、8月は前年並みを確保しそうだ。「ゴールデンウイークの10連休の反動が出ている」という。
中橋のライトアップ(7月1日~8月18日)や手筒花火打ち上げ(8月9日)、絵馬市(8月1~15日)など多彩なイベントを情報発信し、集客につなげる。

 山代温泉観光協会(石川県加賀市)は夏の予約状況について、「例年に比べやや動きが鈍い」と顔を曇らせる。10連休だったゴールデンウイークの反動が出ており、「それも長引いているのが特徴だ」という。
8月は夏の風物詩「山代大田楽」(3、4日)もあり、「それなりに埋まっていく」とみているが、先行きは楽観視できないと気を引き締める。

 道後温泉旅館協同組合(愛媛県)は「現在のところ8月は30~40%の予約。これからどんどん入り、(最終的に)80%は埋まっていくだろう。豪雨があった昨年に比べると、いい状況だ」。

 黒川温泉観光旅館協同組合(熊本県)は、「正確な数字は出ていないが、かなり埋まっている。昨年よりいい数字が出るのではと期待している」。今年4~6月も前年比10%増の実績で、夏の期間も好調を維持しそうだ。

 別府市旅館ホテル組合連合会(大分県)は「7月の入りが若干弱いが、8月は前半から中盤まで、かなり入っている」。7月は豪雨、8月は最大9連休となるお盆前後の日並びの良さが影響しているという。

 由布院ツーリストインフォメーションセンター(大分県)。「8月10~18日はかなり埋まっている。ほかの期間は例年よりは、まだ余裕がある。先の大雨の影響が多少あるのでは」。今年に入り、インバウンドがかなり落ち込んでいるといい、「国内のお客さまにPRする必要がある」。

 指宿市観光協会(鹿児島県)は、予約の間際化が進み、先の状況が読めないとしながらも、「旅館・ホテルからは、前年とほぼ変わらないと聞いている」。県内全体の傾向として「4月から特に韓国、台湾などのインバウンドが落ち込んでいる」のが気になるところだ。

【取材班】

 
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