Klook日本法人 ゼネラルマネージャー 増田航氏に聞く


増田氏

成長続く体験市場に勝機

体験そのもののDX化を支援 180ヵ国以上、グローバルで集客

 ――2021年を振り返って。

 「日本単体では規模はまだ小さいが、大きく伸びた。われわれのプラットフォームへのセッション数を見ると、12月の対前年度比は1千%以上と大きく伸びた。香港本社をはじめ、世界各国に支社があるが、日本の規模は小さいが、成長率は上位に位置し、手応えを得ている。21年初には2億ドルの資金調達を行うなど、投資家を含めて世界からの注目の高まりを感じている」

 ――読者に対し、改めてKlookとは。

 「旅行や体験に係わる全ての商品を誰でも簡単にスムーズに予約して楽しめる総合プラットフォームだ。移動に関する電子チケット、遊びのニーズに対応できる商品など、エアチケット以外の旅行に必要なものは全てある。予約後に窓口に並ばず、QRで入場できる仕組みも提供している」

 ――昨年1月にGMに就任し、1年がたったが。

 「言葉、通貨の違いも関係ない世界観を提供していたが、コロナ禍で世界を跨ぐ旅は激減した。この1年は国内に焦点を当て、取引先である施設や体験事業者に対して、集客を手伝うことに特化した。新たなチャレンジの中、今の環境下で1年に1千%以上の成長を遂げたことは評価できる」

 ――今後の推進事項は。

 「創業以来続けている体験そのもののDX化だ。われわれの体験の定義は、検索から予約、そして現地に行くまでの全て。検索性が高く、一気通貫で予約までできるサービスの提供を突き詰めていく。また、チケット電子化の技術や、仕組みの提供も進めていく」

 ――日本と海外で市場の違いはあるか。

 「ビジネスの世界でDXと叫ばれ10年がたつが、日本人特有の慎重さからか、観光、レジャーに関わらず市場として遅れている。海外渡航再開時には、まず情報強者でクレバーなZ世代から行動が始まる。われわれは特にZ世代へのリーチが強く、強化もしている。支援できることは多い」

 ――日本に足りないものを補うには。

 「まずスピード感だ。日本は観光、レジャーの産業としての成熟度が高い。だが、まだオペレーションでの利便性向上やコスト削減ができる部分が多々ある。現状を変えて便利にする意識を持ち、取り組む最初の一歩を踏み出してほしい」

 ――Klookとしての支援の特徴は。

 「販売だけでなく、マーケティングの支援をもすること。従来日本で行われてきた手法とは違うアプローチを取っている。この先、日本は高齢化、人口減少の問題に直面する。将来に備え、今後は海外からいかに支持を得られるかがビジネスチャンスへの鍵となる。今こそデータなどノウハウや、海外のDMOやホテルなど事業者とのつながり、コンサルティングでの実績を持つわれわれの出番だ」

 ――支援費用面は。

 「ゼロベースから相談を受けている。外国へのリーチは、100万円から1千万円単位のプランまで支援実績がある。訪日の誘客に向けては、海外にマーケティングができる企業との連携が不可欠だ。予算の投下の際は、定性的ではなく支出額から見るデータ量やコンバージョン率など定量的手法をとってほしい」

 ――対象国数は。

 「人を置くのは14カ国、リーチできるのは180カ国以上。Klookはグローバルで満遍なく集客できるところがメリットだ」

 ――日本市場での今後の成長分野について。

 「美術館や博物館、エンターテインメントなどチケットの分野は伸びる余地は大きい。アクティビティに関しても正確なターゲティングで販売拡大が望める。例えば、台湾人は土日、フィリピン人はもう少し長く、欧州は10日以上の滞在が滞在の主だ。滞在日数から行ける場所の選択肢、売れる商品も見えてくる」

 ――現在の課題は。

 「採用と人材トレーニングだ。日本法人でいうと、この2年間は約30人とスリムな体制だったが、今年はリバウンドが見込める年。社内の制度化も含め、急ピッチで取り組んでいく」

 ――22年の目標は。

 「日本に向けた日本の商品展開は継続的に行う。一方、日本に行きたい海外のファンも大勢いる。19年と同様の規模感を見据えて取り組んでいく」

 ――中長期では。

 「将来的には、Klookが日本のユーザーの日常に不可欠なサービスとなること。米国では、人が物を探す際に検索エンジンではなく直接AmazonのようなEコマースプラットフォームに行って検索し、情報収集するのが一般的となっている。日本の若者もSNSから検索するという行動様式が表れており、あと5年後には、われわれは、旅行や観光の分野でそうありたい」

 

ますだ・わたる=2004年に日系人材サービス会社に入社。米国で事業開発マネージャーとしてロサンゼルスに4年間駐在。12年からアマゾンジャパンで物販サービス部門の営業部長、Amazon Alexa事業開発シニアマネージャーなどを歴任。2020年から同社の国内立ち上げをリードした後、21年1月から現職。

【聞き手・長木利通】

 
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