JTB GMTの要員を補強  JTB執行役員 グローバル統括本部長 城戸五郎氏に聞く


JTB執行役員 グローバル統括本部長 城戸五郎氏

海外事業会社ではMICE需要に対応

 ――訪日インバウンドの現状をどう見ているか。

 「コロナ禍で厳しい状況が続いたが、昨年9月にツーリズムEXPOジャパンが開催され、水際対策の10月からの大幅緩和が発表されて以降、桜シーズンに向けた訪日旅行の予約が急激に入ってきた。現在でも中国の団体観光が戻ってこないなど、インバウンド需要はコロナ以前の状態に回復したわけではないが、全国旅行支援の実施に伴う国内旅行の動きなどを踏まえ、旅館・ホテルの受け入れ態勢を考えると、訪日客が段階的に戻ってくるという状況は、業界にはかえって良かった面もある。国際線の回復も進み、3月には国際クルーズも再開した。欧米にはコロナ前の訪日客数を超える国も出てきている」

 ――22年度のJTBの取り組みはどうだったのか。

 「22年度の前半はインバウンドの復活に向けた準備段階だった。訪日観光の再開に向けてパッケージツアーの受け入れに関する観光庁の実証実験に参画したり、スポーツイベントにおける海外選手の受け入れなどの業務を取り扱ってきた。先を見据えて旅館・ホテルの仕入れや企画の作成、新たな観光ルートの開発などにも取り組んだ」

 「当社の体制としては、全ての事業活動にインバウンド目線を入れていこうと、今年1~3月の準備期間を経て、『訪日インバウンド共創部』を4月に新設した。各ビジネスユニットを横断する組織で、訪日インバウンドに関連する事業全体を俯瞰し、全社的に取り組んでいく」

 ――23年度の訪日旅行の市場動向をどう見るか。

 「訪日インバウンドは、想定していた以上に速いスピードで回復している。5月に『G7サミット』があり、9月には北海道で『アドベンチャートラベル・ワールドサミット』もある。こうしたイベントを通じて日本への注目が増し、回復に力強さが出てくるはずだ。中国の訪日団体観光は年内のいずれかのタイミングで再開されることを期待したい。今年の10月の国慶節休暇は8連休で、このときまでに解禁されると大きな動きになる。訪日インバウンドには、世界的な景気悪化などリスクはいくつか考えられるが、回復のシナリオは前倒しで進むと見ている」

 ――JTBの23年度における取り組みは。

 「まずは、急回復している海外からのお客さまをしっかりお迎えするため、JTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT)の要員補強などを進めている。コロナの3年間でインバウンド以外の業務に従事していた社員も多く、エンゲージメント強化に取り組んでいる」

 「海外事業会社では、個人旅行に加え、アジアを中心に急回復している企業インセンティブ、グループ旅行含めたMICE需要にしっかり対応する。また、欧州ではリモートコンシェルジュ・サービスに注力するなど、お客さまを受け入れるための営業強化に加え、新たな施策も推進する。訪日インバウンドに関するあらゆる分野で取り組みを進めたい」

 「先ほど話したインバウンド共創部の取り組みの一つとして、47DMCの支店と連携し、地方への誘客プロモーション、コンテンツの磨き上げ、新たなルート開発を強化している。新たなルート開発は、ゴールデンルート以外の地方への誘客拡大、オーバーツーリズム対策としての地方分散につながる。具体的には、東京から金沢を回って京都に至る『レインボールート』や、広島、宮島、松山、直島、しまなみ海道などをつなぐ『せとうちシーニックルート』について、周辺エリアを含めたルート開発を進めていて今後も広げていきたい」

 「サステナビリティに関するプロダクト開発も重要な課題だ。主にカーボンオフセットの考え方をツアーに取り入れていくが、歴史的な街並みや豊かな自然環境など、サステナビリティを体現する場所や施設を訪れてもらうことも重視している。富裕層や欧米の若年層をはじめとする意識の高い旅行者は、自分たちが利用する宿泊施設やレストランのサステナビリティへの姿勢を重視して選ぶようになっており、グローバルスタンダードを意識した対応が必要とされている」

 ――23年度の販売目標は。

 「訪日インバウンドを専門に取り扱うJTBGMTおよびオンライン販売サイトJAPANiCANの数字で言うと、22年度の販売実績は、訪日需要の回復が10月以降と後半だったこともあり、コロナ前の19年度に比べて約15%の水準にとどまる厳しい状況だった。23年度は、まずJTBGMTを柱とした訪日インバウンド関連事業全体でコロナ禍以前の実績に少しでも近づけていきたい」

 ――旅ホ連との連携、また旅館・ホテルへの要望は。

 「要望というより、実際に旅行者をお迎えしている旅館・ホテルの皆さまに、現場で何が起きていて、何が求められているのか、47DMC支店の社員を含め、私たちに教えていただきたい。それを踏まえて、サービスの向上や体験プログラムづくりなどのお力になりたいと考えている。今、人手不足でご苦労されている施設が多く、復活した訪日インバウンドの需要取り込みも容易ではないと伺っているが、そうした課題を含めて、現場の状況をフィードバックしていただければ、それに応える提案をさせていただく。訪日インバウンドは回復が続き、さらに成長する段階へと入っていく。皆さまと一緒にアイデアを出し合って、オールジャパンで訪日インバウンドを盛り上げていきたい」

 
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