日本政府観光局(JNTO)は2月18日、東京ビッグサイトで開かれたインバウンドマーケットEXPOでセミナー「with―コロナ時代の訪日プロモーション戦略」を実施した。金子正志理事が講演した。
金子理事は「JNTOが実施した各種調査で、旅行先としての日本の人気度は上位をキープしていることが分かった。ただ、人気があるからといって、顧客が早期に戻ってくるとは限らない」と指摘。その上で「感染拡大国との印象を払拭()するためには、感染縮小に向けた実績値を正しく迅速に発信するのが近道。感染症対策は当然の前提とした上での魅力の訴求が求められる」と話した。風評被害を防止し、相手国における日本の見方を踏まえて個別に対策を取る必要があるとした。
訪日再開にあたっては、「(コロナ禍の前後で)変わるものと、変わらないものを見極めることが大事」と強調。具体的に変わるものとしては、(1)万全の感染症対策が求められる(2)旅行のハードルが上がり、特別な目的が重要になる(3)否応なしのオンライン化―を挙げた。一方、変わらないものには、(1)日本の観光の魅力(2)旅行需要の本質―を挙げた。「むやみに焦らず、日本の魅力に自信を持って冷静に対応すればよい。旅行は行くのが一番。安易にバーチャルに流れるわけではない」と語った。
また「with―コロナ時代に向けた観光地域づくりには、感染防止策の徹底と情報提供が欠かせない。従来の観光・アクセス情報等に加えて、衛生対応情報、混雑状況情報、事前予約の可否と予約方法等の情報を地域から発信することで、旅行者と地域の負担軽減を実現することができる。混雑の解消による需要の平準化は、受け入れ態勢の質的向上、オーバーツーリズムの回避につながる」などと指南した。
政府目標である「2030年に訪日外国人旅行者数6千万人、訪日外国人旅行消費額15兆円」については、「2020年の4千万人、8兆円も高い目標だった。引き続き実現に向けて努力する」とした。
目標の達成に向けては、「新規顧客の開拓と併せ、近隣諸国の主要顧客である『リピーター』への訴求がますます重要になってくる。定番頼りではなく、新たな『地域の魅力』発信で受け入れ容量を拡大する必要がある」と指摘。さらに「これからは『単価を上げる』ことへの注力が一層重要になる。(地方での)長期滞在、充実した体験型(アクティビティ)の定着は有効だ。質の高い商品・サービスの提供による富裕層向け旅行の促進も引き続き欠かせない」と述べた。
セミナーで講演するJNTOの金子理事