
長野県飯山市での現地研修。ブナ林のトレッキングを体験した
国内旅行活性化のカギを握るのが、エコツーリズムや産業観光などのニューツーリズム。日本旅行業協会(JATA)は、ニューツーリズム商品の流通促進に乗り出し、旅行会社向けの現地研修を始めた。商品造成や販売の手法などに課題もある新分野だが、地域が開発したプログラムを実際に体験してもらうことで、旅行会社の商品化を後押ししている。
JATAが国内観光振興を目的にニューツーリズムに関する現地研修を実施するのは今年度が初めて。すでに4回実施した。研修先は熊野古道(和歌山県など)、東北(山形県など)、南房総(千葉県)、飯山市(長野県)。いずれの地域もニューツーリズムにかかわる体験・交流型のプログラム整備に力を入れている。
研修先の1つ、飯山市は、民宿が軒を連ねる戸狩・信濃平地区、リゾート地の斑尾高原などがあり、グリーン・エコツーリズムを軸にした通年型観光の確立に取り組んでいる地域だ。この10年間でスキー客への依存からの転換を図り、ブナ林や里山を巡るトレッキング、農村での農業体験などのプログラムを充実させている。テーマ別に地域を歩く「歩こさいいやま」と題した16コースも整備した。
7月31日から1泊2日で行われた飯山研修には、旅行会社の担当者ら16人が参加。中高年らの集客に成果を上げているトレッキングをガイド付きで体験した。登山ツアーに強みを持つアルパインツアーサービス営業部、竹森壮孝氏からは「ガイドやアクセスなど受け入れ態勢も整っている。登山愛好家は高齢化が進み、滞在型で無理なく楽しめるトレッキングツアーとして商品化できそうだ」との声が上がった。
このほか参加者からは、心身の癒しにつながるプログラムを盛り込んだ森林セラピー、野菜の収穫などの農業体験、飯山で撮影が行われた映画「阿弥陀堂だより」のロケ地巡りなどに高い関心が寄せられた。
ニューツーリズムの浸透に向けて、旅行会社の送客に対する地域の期待は大きい。飯山市の場合、飯山市観光協会が第三種旅行業を取得し、着地型旅行商品を販売できるが、広範な販売チャネルを持つ旅行会社との連携を特に重視している。5年後に北陸新幹線「飯山駅」の開業を控え、都市圏からの集客拡大が課題となっているためだ。
飯山の自然や農業を生かした体験型プログラムを提供する宿泊施設「なべくら高原・森の家」の木村宏支配人(飯山市振興公社)は「旅行会社には単なる時間消費ではなく、地域の魅力が伝わり、旅行者の満足度向上につながるような商品造成を期待している。地元のガイドを十分に活用した商品などを検討してもらいたい」と話した。
ニューツーリズム商品の流通促進には課題もある。旅行目的に明確なテーマを持たせることから、商品としては小ロット、多品種となりやすい。商品づくりや受け入れに多数の関係者がかかわるため、旅行代金も高くなりがちだ。マスの流通に主眼を置く旅行会社には、商品造成や販売戦略に新たな手法の確立が求められている。
飯山研修に参加したJATA国内旅行委員会の藤野茂副委員長(日本旅行取締役常務執行役員)は「旅行会社は販売実績を上げなければならいが、ニューツーリズムを大きなウネリとするために、ある程度時間をかけて商品を育てる必要がある。地域と連携する姿勢も重要だ」と語った。
JATAは、今後も現地研修を開催する予定で、継続的にニューツーリズムの定着に取り組む考えだ。

長野県飯山市での現地研修。ブナ林のトレッキングを体験した