JASRACと宿泊施設 日本音楽著作権協会 伊澤一雅理事長に聞く


伊澤理事長

ビジネスパートナーとして一層の信頼関係を深めたい

 ――理事長就任に当たり意識したことは。

 「『改革と挑戦』を掲げた浅石道夫前理事長の路線を『継承』し、しっかりと成果を実らせていく。そのうえで、その効果を『検証』し、次の進路を定め、将来につないでいきたい」

 ――改めて、JASRACの使命をうかがいたい。

 「世界中の多様な音楽に触れることができる、豊かな社会を実現することが私たちの使命だ」

 「積極的な利用許諾を通じて音楽の利用の円滑化を図りつつ、音楽クリエイターなどの権利者へ精緻に使用料の分配を行っている」

 「権利者もどんなところで自分の曲が使われているのか関心を持っており、全国津々浦々で使われているのかが分かるようになっている」

 ――実家は栃木で旅館を経営していたとか。

 「創業は徳川吉宗が将軍だったころと聞いている。歴史ある旅館だったが1990年に閉館した。徳川家ゆかりの日光東照宮に至る日光街道沿いにあり、日光詣でのにぎわいなどで繁盛していたようだ」

 「母が切り盛りし、身近で旅館経営を見てきた。自分の時間はなく、すべてはお客さまのためで、大変な仕事だと思った。旅館・ホテル経営者の皆さまに敬意を表したい。もともとはビジネス向けの旅館だったので音楽は利用しておらず、JASRACとの付き合いはなかった(笑い)」

 ――印象深い観光地といえば。

 「栃木の塩原温泉はいろいろな泉質があり、温泉そのものが楽しめる。鬼怒川や福島の裏磐梯もいい印象を持っている。また、岐阜の奥飛騨温泉郷の新穂高温泉はロープウエーがあり、足を伸ばせば長野の上高地にも行ける。ヨーロッパを彷彿(ほうふつ)させる山岳風景が素晴らしい」

 ――JASRACにとって旅館・ホテルはどんな存在か。

 「旅館・ホテルはカラオケや生演奏など、営業の中で多くの音楽を利用いただいている。JASRACは全国に支部を置き、各地の旅館・ホテルの皆さまと利用許諾の契約を結んでいる」

 「旅館・ホテルは地域に根ざし、多くの信頼を得て経営されている。皆さまと密な関係をつくることで、各地での連携の幅が広がり、より深いコミュニケーションを取ることができると実感している。音楽の利用者と権利者という関係にとどまらず、ビジネスパートナーとしての関係をさらに発展させていきたい」

 ――コロナ禍で旅館・ホテルは宿泊客が減少していたが、ようやく回復の兆しを見せているようだ。

 「JASRAC会長でもある作曲家の弦哲也さんが『曲作りに旅は欠かせない存在』と言っていたとおり、旅と音楽の関係は深い。コロナ禍でコンサートやカラオケを中心として、音楽関係者も厳しい状況に置かれた。働き手の確保など課題もあるが、各地でのコンサートや野外フェス、カラオケなどが盛り上がることで、旅館・ホテルの回復をより加速させることができると考えている」

 ――日本の音楽シーンを支えるJASRACですが、旅館・ホテルを含めた観光業界にメッセージをいただきたい。

 「お支払いいただいている著作権使用料がクリエイターなどの権利者に還元されることで新たな創作につながる。私たちはこのことを『創造のサイクル』と呼んでいる」

 「昭和の時代から今日まで、半世紀以上にわたって続く旅館・ホテルの皆さまとの信頼関係は、まさにこのサイクルを太くするもので、信頼の証しといえる。皆さまの使用料がクリエイターを支えている。長年のご理解・ご協力に感謝を申し上げたい」

 「今後より一層の信頼関係を深め、ともにこの困難な時代を乗り切ることができるよう、著作権管理業務に取り組んでいきたい」

 

 いざわ・かずまさ 1983年JASRAC(日本音楽著作権協会)入社。システム部長、管理本部審議職などを歴任。2016年6月常務理事。22年6月現職就任。栃木県出身、62歳。

【聞き手・内井高弘】

 
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