GWの国内旅行、震災の反動で動き


昨年は震災の影響で旅行の手控えが目立った(昨年5月、JR東京駅)

昨年は震災の影響で旅行の手控えが目立った(昨年5月、JR東京駅)

 今年のゴールデンウイーク(GW)は連休を取りやすい日並びになっており、旅行に出かける人が多くなりそうだ。昨年は3月11日の東日本大震災を機に自粛ムード一色となり、GWもその影響を受けた。その反動も出そうだ。旅行会社と、東日本の温泉地に予約状況を聞いた。

旅行会社
 JTBによると、GW(4月25日〜5月5日出発日基準)の国内旅行人数は前年同期比4.2%増の約2065万人の見込み。ただ、2010年と比べると約5%減で、震災前の水準にはまだ戻りきっていないようだ。

 近畿日本ツーリスト(KNT)メイト事業部(首都圏)の取り扱い状況(4月28日〜5月7日)は前年同期の4割増。北海道、九州、中国四国方面と、東京ディズニーリゾート(TDR)関連が好調。「特に北海道方面のパーソナル型、中でも価格訴求のフリープランは好調」(ブランド戦略室)。4月から全社北海道キャンペーンが始まっており、これに向けた北海道商品の開発と需要喚起の取り組みが進んでいたことも好調要因と見る。

 東北方面、関東近郊の宿泊商品などは昨年の反動もあり、大幅増となっている。

 日本旅行の国内パッケージ商品、赤い風船の受注状況(2日現在、人員ベース)は10年同期比で20%増となっている。「11年は東日本大震災による異常値のため、10年と比較した」という。

 方面別では九州(60%増)、京阪神(34%増)、首都圏(27%増)、中四国(12%増)の伸びが目立つ。「九州は新幹線効果の取り込み、京阪神はUSJの新エリアオープン効果、首都圏はTDR関連が堅調。中四国はNHK大河ドラマ『清盛』の効果があるようだ」。東京スカイツリーについては開業前のため、「効果のほどは何ともいえない」としている。

 後半(5月1〜6日)に比べ、前半(4月26〜30日)の予約が好調で、10年比108%増となっている。

 阪急交通社の予約状況(24日〜5月5日出発分、人員ベース)は11年同期比110%増だが、10年と比べると7%減。震災の影響で落ち込みが懸念された東北だが、11年実績は10年比7%減にとどまった。今年は11年比で432%増となっており、「回復傾向にある。一昨年並みに戻ってきた」という。

 11年と比べると全方面で増加しており、特に東海(358%増)、関東(246%増)、四国(109%増)の伸びが目立つ。

 売れ筋商品の1つは、「紀伊半島の秘境大縦断3日間」。昨年9月に和歌山を襲った台風の影響で販売を中止していたコースだ。3月から再開し、GWは好調に推移している。また、行き先不明のミステリーツアーも売れている。

 トップツアーの個人旅行は取り扱いベースで前年同期比16%増。方面別では東北が10倍以上の伸び。常磐、房総を除く北関東、TDRを含む南関東、伊豆箱根方面が50%の増加。「昨年落ち込んだエリアは(客足が)戻ってきている」という。

 このほか、信越・飛騨が17%増、昨年好調だった関西が18%増、九州も18%増で「九州新幹線効果の持続、NHK大河ドラマ効果もうかがえる」としている。
 旅行のピークは5月3日。

 クラブツーリズムの予約状況は「ほぼ10年並みかややプラスといった程度で、全般的に西高東低の傾向にある」(広報課)という。そうした中、比較的好調なのが九州方面で、新幹線効果がまだ続いている。

 GW期間の販売に影響が大きいのが東北方面の桜で、開花の遅れが影を落とす。「間際まで待って、開花を見極めてから申し込む人も多そう」と見る。

 「東北や関東方面が人員ベースで、前年同期と比べ2ケタ増となり、回復傾向にある」というのはジャルパック。九州方面も「新幹線開業による注目度の高まりなどから好調」で、2ケタの伸びに。半面、北海道、沖縄方面などが伸び悩み、前年を若干下回る状況となっている。

 楽天トラベルの4月28日〜5月6日の国内旅行(宿泊、ダイナミックパッケージ)の予約状況は前年同期比54%増で、うち東北6県は171.6%増となっている。6県について見ると、女性の複数人旅行が66.5%増、子供連れ旅行は56.8%と大きく伸びている。首都圏(1都3県)も69.6%増と好調。「TDRの人気回復や東京ゲートブリッジの開業効果や東京スカイツリーへの期待などもあり、家族層の需要が増えている」という。

 旅行者の多い東京在住会員のGW動向を調べたところ、旅行先として挙げたのは栃木が124.4%増、群馬112.7%増、神奈川74.7%増と近場が人気なことが分かった。また、アンケートによると、GWの旅行期間は1泊2日が38%、2泊3日が33%で、7割超が3日間以内。旅費は3万円未満が50%以上で「安・近・短傾向が見られる」と分析する。

温泉地
 観光地、温泉地の集客の見通しは、震災の影響を大きく受けた昨シーズンに比べて格段に明るい。しかし、東日本エリアには、原発事故に伴う放射能の風評被害に依然として苦しむ地域、長期にわたって集客が伸び悩む地域もある。観光事業者はGWを契機とした観光需要の本格的な回復を期待している。

 震災以降、観光需要が落ち込んできた東北、北関東。福島・岳温泉は、今のところ宿泊予約の入りが例年の4、5割程度で、問い合わせも少ないという。観光協会の木村泰司・総務企画部長は「間際にはどこも満室になるだろう」とする一方で「現状は県内客が中心で、間際の値下げなどの様子を見ている感じがある」と単価の下落を懸念する。

 天候不順による桜の開花の遅れが旅行計画の遅れにつながっているとの見方も。秋田・男鹿温泉郷の元湯雄山閣の山本貴紀専務は「まだ先が読めない。天候を見ながら考えているお客さまも多いと思うので、間際の予約に期待したい」と話す。

 栃木・塩原温泉の彩つむぎ女将の君島理恵氏は「5月3、4日の宿泊から予約が入りだしたが、出足が遅い日もある。もちろん昨年と比べれば状況は良いが、風評被害が完全になくなったわけではない。放射線量のデータをツイッターで毎日発信するなど、引き続き正確な情報提供に努めている」と語る。

 旅行自粛ムードの払しょくに懸命だった昨年の春から一転、集客に手ごたえを感じている地域も多い。神奈川・箱根温泉の旅館協同組合は「桜の開花とともに旅行のムードが高まってきたように感じる。昨年の分を取り返したい」。新東名高速の開通で中京方面からの集客増加も期待される。ただ、「ガソリンの値上がりが気になる。マイカー客への影響が読めない」という。

 北海道・湯の川温泉の旅館協同組合の金道太朗組合長は「予約の間際化は進んでいるが、GWは例年埋まるので特に懸念はない」としているが、「むしろGW後の集客の方が問題」とオフシーズンの集客対策を課題に挙げている。

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