本格的な回復は10月以降に
全国の宿泊施設における2020年7~9月期の延べ宿泊者数は、前年同期比55.3%減の7328万人泊となった。観光庁の宿泊旅行統計調査の第1次・第2次速報値。政府のGo Toトラベル事業などが宿泊需要を下支えしたが、繁忙期の夏季の実績は前年の半分程度にとどまり、顕著な回復が統計に表れるのは10月以降になりそうだ。客室稼働率も改善しているが、9月の速報値は35.6%にとどまった。
延べ宿泊者数を四半期別に見ると、1~3月期は前年同期比23.9%減の1億454万人泊だった。4~6月期は、感染拡大に伴い政府の緊急事態宣言が発令され、外出自粛の要請などを受けて休業した宿泊施設も多く、同78.5%減の3173万人泊だった。
月別の延べ宿泊者数では、5月に前年同月比が84.9%減を記録し、落ち込みの底だった。Go Toトラベル事業や自治体による旅行・宿泊の費用支援事業などの実施で、下げ幅は7月が58.3%減、8月が58.6%減、9月が47.6%減に縮小した。
政府のGo Toトラベル事業が7月22日に始まり、一定の宿泊需要が喚起されたとみられる。事業の事務局の集計によると、9月末までのGo Toトラベル事業の利用は少なくとも2518万人泊とされており、単純計算で7~9月期の延べ宿泊者数の34.4%で利用されたことになる。
Go Toトラベル事業の本格実施は10月1日からで、9月末までは東京都は対象外、地域共通クーポンも未実施だった。東京都の延べ宿泊者数は、7月が前年同月比77.0%減、8月が同76.1%減と全国に比べて回復が遅れている。東京都以外にも、新型コロナの感染状況、コロナ禍の旅行動向を反映して減少率が大きい地域がある。
インバウンドの需要は回復していない。新型コロナの流行前には延べ宿泊者数全体の約20%を外国人が占めていたが、水際対策に伴う入国制限などで旅行者が激減し、9月の外国人構成比は1%未満だった。観光目的の入国は依然なく、4月以降は各月の前年同月比が98%前後の減少で推移している。
20年1~9月累計の延べ宿泊者数は、前年同期比53.3%減の2億955万人泊となった。このうち外国人延べ宿泊者数は同80.7%減の1685万人泊で、全体に占める割合は8.0%だった。
全国の宿泊施設の客室稼働率は、延べ宿泊者数の動きと同様に5月に底を打った。5月には12.9%まで下落したが、7月が29.6%、8月が31.9%、9月が35.6%と一定の回復が見られた。しかし、前年同月の数値と比べると、7月は33.7ポイント減、8月は37.5ポイント減、9月は27.8ポイント減と低迷している。
客室稼働率の回復については、地域差だけでなく、施設のタイプ別に差が見られる。9月の速報値では、旅館が前年同月比10.2ポイント減の29.2%、リゾートホテルが同25.7ポイント減の34.1%、ビジネスホテルが同32.4ポイント減の43.9%、シティホテルが同44.8ポイント減の34.5%。旅館、リゾートホテルに比べて、シティホテル、ビジネスホテルの下げ幅が縮小していない。
※図表 2019年の数値は確定値、2020年1~8月は第2次速報値、2020年9月は第1次速報値(観光庁:宿泊旅行統計調査)