【脱炭素でスマートな旅館 国際観光施設協会エコ・小委員会 68】ウェルビーイングな脱炭素社会への移行


 国際ホテル・レストランショーで三つのセミナーを開催した。ホスピタリティデザインセミナーで宇都宮大学環境経済学の高橋若菜教授が「ウェルビーイングな脱炭素社会へのトランジション」と題して講演された。リゾートの宿泊施設は水光熱使用量が多く、CO2排出量が家庭の10倍になっていることを事前に知らせ、それに対して宿泊施設は最もエネルギーを使う産業の一つで、かつ最もウェルビーイング(幸福)を提供するというジレンマを抱え、その解決には単体技術や我慢することでなく、社会的な構造変化を伴うウェルビーイングな脱炭素が必要との見解を示された。

 教授は毎年夏に滞在し、研究している環境先進国スウェーデンを例にして話された。スウェーデンは面積では日本の1.2倍だが人口は1千万人と少なく、両国はユーラシア大陸の東西の端に位置してロシアが隣国。森林国で化石燃料が無く、北極圏にあり寒い。1970年代は1人当たりCO2排出量が日本より多かったのが近年は3分の1に減らしている。木質バイオマスや、生ごみ発酵によるバイオマスガスによる発電を実用化し、3重サッシュが主流で2重サッシュは特注で金額が高く、炭素税が1.9万円/CO2トンと日本より2桁高い。

 講演前にペットボトルのお茶を用意すると、スウェーデンはペットボトルのミネラルウォーターが千円もするのでと言ってマイボトルを出された。日本ではゴミの選別が進んでいるが、あちらではゴミは資源になっている。家の窓からは3本の木が見え、どの町も樹幹被覆率30%、300メートル歩けば、公園や緑地がある「3―30―300ルール」や水の通り道を確保して、水資源をカスケード利用するなど、日本とは条件が違っていても参考になりそうなことが多い。経済的手段と規制的手段で社会構造を変革することで環境先進国になっていることに注目したい。

 二つ目は東北文化学園大学の赤井仁志特任教授が「コスト削減と脱炭素の切り札・ヒートポンプ給湯システム」で、太陽光発電とヒートポンプの合わせ技で再エネの弱点を複合技術で克服する例を話された。

 三つ目はNRTシステムの畑治氏が「脱炭素・循環型社会に向けて欧州の厨房と食品残渣再資源化の最新情報」として、ドイツの厨房機器メーカーMEIKOが食品残渣(ざんさ)からメタンガスを製造し、車の燃料、電気に変換と再資源化の紹介で、いずれも欧州とりわけスウェーデンで進んでいる。カーボンニュートラル×ネイチャーポジティブ×サーキュラーエコノミーのシナジー効果が進むスウェーデン社会をこの目で確かめてみたいと思った。

(国際観光施設協会理事エコ・小委員会委員長、日本建築家協会登録建築家、佐々山建築設計 佐々山茂)

 
 
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