そぞろヘルパーの同行で、階段も苦にならない
兵庫県では、旅行会社視点による情報発信やユニバーサルツーリズム(UT)商品の造成に向けた取り組みを始めている。2月上旬には地域を挙げてUTに取り組む「ひょうごUT推進エリア」に指定されている城崎温泉を舞台に、車椅子利用者・3世代旅行をテーマとしたモデルコースを設定。旅行会社向けにファムトリップ(1泊2日)を初めて実施した。
UTを体験、商品化のヒントつかむ
城崎温泉のテーマは「外湯めぐりとそぞろ歩きのユニバーサル化」。外湯への視覚障害者が触って認識できるユニバーサルデザインボトルの導入や、車椅子に座ったまま利用が可能な外湯・柳湯の足湯バリアフリー化、旅行者の相談対応等を視野に入れたUTヘルプサービス機能の構築など受け入れ環境の整備に取り組んでいる。
ファムトリップでは、JTB神戸支店が受託事業者として実施を担当したほか、名鉄観光サービス、ジャルパック、日本旅行業協会(JATA)が招聘旅行会社として参加。UTの情報発信や商品造成に向け、各社が城崎温泉の受け入れ環境を実際に視察した。
また、UTヘルプサービス機能の構築などに取り組む豊岡市のNPO法人「ぷろじぇくとPlus(プラス)」も協力した。
今回のモニターは朝来市在住の70代男性・尾崎八郎さん、娘の足立ちとせさんと孫で小学3年生の足立楓夏さんの3人。八郎さんは左半身がマヒし、屋外は車椅子、屋内は装具を付けて歩行器で移動している。
3世代での旅行は初めてで、観光体験や移動の各場面を招聘した旅行会社とともに確認。利用者にとって有益と感じられた点や、UT推進エリアとしての強みも共有した。
移動介助の「そぞろヘルパー」が活躍 電動車椅子で階段も快適
初日はJR城崎温泉駅から行程をスタート。ここではプラスが普段貸し出している、車椅子利用者が自分で操縦できる電動車椅子が用意され、参加した旅行会社も試乗。簡単なレバー操作で運転でき、「使いやすい」との声が上がった(料金は4時間までが3千円、8時間まで4千円、1泊2日だと7千円)。
温泉街を巡るのに活躍したのが車椅子に取り付けるだけで人力車のようにけん引することができる車椅子補助装置だ。移動介助を担う「そぞろヘルパー」が前輪を持ち上げると、階段や雪の上なども移動できる。孫の楓夏さんも尾崎さんが乗った車椅子を引っ張り、孝行ぶりを見せていた。

そぞろヘルパーの同行で、階段も苦にならない
街中にあるゆかた専門店「いろは」は、車椅子に座ったままで浴衣を着ることができる体験を紹介。着用を諦めることが多い車椅子利用者にも対応できるよう工夫を凝らして着やすいようにした。尾崎さんも浴衣に袖を通し満足げ(体験料は4500円から)。

車椅子に座ったまま浴衣を着ることができる
その後、車椅子に座ったまま利用可能な「柳湯」の足湯を体験し、参加旅行会社とともに環境整備について確認した。

車椅子に対応した足湯
宿泊・入浴も手厚くサポート 手作り体験楽しむ姿も
宿泊はひょうごユニバーサルなお宿の登録施設であるあさぎり荘。あさぎり荘は車椅子対応の部屋が2室あり、今回利用した「デラックスユニバーサルルーム」(定員6人)には、介護ベッドのほかに、バスルームには専用の移動式チェアも備えてある。
尾崎さんは今回、大浴場を利用するため、プラスが提供する入浴介助サービス「湯あみヘルパー」を利用。2人体制で健康状態の確認から入浴介助までを手厚くサポートするもので、安心して温泉を楽しめる体制が整っている。

湯あみヘルパーによる入浴前の体調チェック
尾崎さんは「20年ぶりに温泉に入れた」と顔をほころばせた。旅行会社からもUT商品の付加価値として活用できるサービスとして評価された(料金は90分税込み1万5千円)。
2日目は「かばんのたなか」でミニ手提げかばん作りを体験し、県立コウノトリの郷公園へ。
その後、但馬の小京都・出石へ移動し、「城山ガーデン」で名物・皿そばのそば打ちを体験。ヘルパーのフォローでそば粉をこね、伸ばして切り、味わい、地域ならではの魅力も体験した。

そば打ち体験
食後は、出石城跡や出石家老屋敷、日本最古年の時計台「辰鼓楼」などがある風情あふれる街並みを散策した。
尾崎さん親子ともに高評価 移動動線や設備など改善点も
行程の最後には、モニターと旅行会社による意見交換会が開かれ、旅の振り返りとともに各社からの視察内容を踏まえた意見が交わされた。
尾崎さんは3世代で旅行できたことを喜ぶ。体が不自由なため旅行は無理だと思っていただけに、「とてもいい思い出になった」という。
娘の足立さんも「一緒に旅行することは考えられなかったが、湯あみヘルパーなどのサポートがあることで、私たちも楽しめた」と旅行を振り返った。
一方で、移動動線や施設の手すりの位置など、より利用しやすくするための改善点も挙げられ、受け入れ環境を見直す具体的なヒントとなった。
旅行会社からは、「UTの現状を知るいい機会となった」「これまでつながりが少なかった介護タクシーや入浴介助の体験を間近で見ることができ大変参考になった」と現場の取り組みを直接確認したことを踏まえ、今後の情報発信や販売促進の必要性を共有した。
少子高齢化が進む中、ますますマーケットが拡大するUT。受け入れ環境の充実が進む兵庫でのさらなる展開が期待される。




