JTBが東京大学と次世代IT人材育成プログラム MWC視察で実践的スキル習得


 JTBは2月18日、東京大学工学系研究科中尾研究室と産官学連携による次世代通信人材育成プログラムを2月20日から開始すると発表した。世界最大の通信展示会MWC(3月2日~5日、バルセロナ)を実践フィールドとした国内初の試み。2030年に最大80万人不足予測のIT人材問題解決と日本の国際競争力強化を目指す。

 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のASPIREプログラム(先端国際共同研究推進事業)の支援を得て実施。今年度は企業3~4社と学生3名が協働で海外展示会視察・調査・レポート作成を行う。2028年には参加企業10社・学生30名への拡大を予定している。

日本企業の50%がデジタル化未実施

 プログラム開始の背景として、総務省の調査(2023年)によると日本企業の50%以上がデジタル化を未実施であることが挙げられる。AI・データ解析の専門家が在籍する企業はわずか21.2%にとどまっている。

 経済産業省の推計では2030年までにIT人材が最大80万人不足するとされる。日本の通信業界における国際競争力の低下は、経済成長の鈍化や社会インフラの脆弱化に直結する重要な課題となっている。

 本プログラムは企業の新規事業創出、学生のグローバルキャリア形成、そして日本社会のデジタル化推進に貢献することを目的とする。

産官学連携で体系的な学習機会を提供

 プログラムは「次世代通信の羅針盤:イノベーションリーダー育成プログラム~産官学連携で挑む、世界最先端の学びと実践~」と名付けられた。

 連携事項として、MWCを活用した実践的な通信業界人材育成プログラムの共同開発・運営、企業と学生による協働型海外展示会視察・調査・レポーティング、事前・事後ワークショップによる体系的な学習機会の提供を行う。

 体制と役割分担では、JTBがプログラム設計・造成・提供(プラットフォーム機能)を担当。東京大学中尾研究室と長谷川史樹氏(三菱電機)がプログラム価値と質の担保を担当する。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が支援機関として参画する。

 2026年はトライアル実施として位置づけ、初回プログラムには参加企業3~4社、参加学生3名を予定している。

エンドユーザーから企業まで幅広いメリット

 提供価値と差別化ポイントとして、エンドユーザー便益では、グローバルな最新技術・ビジネス動向の体感、企業との深い相互理解によるマッチング精度向上、実践的なプロジェクト推進スキルの習得を挙げている。

 企業メリットは、体系的なオープンイノベーション推進、優秀な若手人材との接点構築、社員の士気向上と周辺社員への刺激効果、新規事業創出のヒント獲得。

 競合優位点として、海外展示会を活用した産官学連携による人材育成は国内初の試みであることを強調。従来の「行くだけ」の展示会参加から、目標設定・協働調査・成果共有という体系化されたプログラムへの転換を実現している。

渡航前後の体系的なプログラム構成

 プログラム内容は渡航前、渡航中、渡航後の3段階で構成される。

 渡航前では事前オリエンテーションでの企業・学生混成グループによる共通目標・テーマ設定を行う。

 渡航中はMWC現地での協働ブースツアー・技術セミナー参加・現地企業との交流を実施。

 渡航後は企業の新入社員研修や中堅社員のグローバル視野拡大研修としての活用、学生の就職活動を見越した深い企業理解と自身の活躍イメージ構築機会、共同レポート作成を通じた実践的なビジネス提案スキル・プレゼンテーション能力の向上を図る。

各関係者が期待を表明

 各社・関係者からのコメントでは、JTBビジネスソリューション事業本部第二事業部長の清水徹也氏が「本プログラムは当社が推進する『交流創造事業』の具現化として、人材交流を通じて日本の通信業界発展に貢献する社会課題解決型の取り組みです。産官学の強力な連携により、次世代を担うグローバルリーダーの育成と日本企業の国際競争力強化を支援してまいります」とコメントした。

 東京大学大学院工学系研究科教授の中尾彰宏氏は「本プログラムは、世界最大級の通信展示会MWCを実地で体験することにより、学生が次世代通信技術とグローバルな産業動向を自らの目で捉え、研究と社会実装を結び付けて考える力を養う極めて意義深い取り組みです。産官学連携の枠組みの中で、技術・ビジネス・政策が交差する現場に触れる経験は、将来の研究テーマ設定やキャリア形成に大きな示唆を与えます。本学から世界へ挑戦する志を持つ人材が育つことを強く期待します」と述べた。

 三菱電機株式会社通信システムエンジニアリングセンターの長谷川史樹氏は「本プログラムは、近年深刻化しているIT人材不足の中でも、特にワイヤレス分野に焦点を当て、次世代リーダーの育成を目指す取り組みです。グローバルの最先端技術に触れることで、世界や日本の現在地を正しく把握し、今後の活動の大きな一歩となるきっかけを得ていただけることを期待します」とコメントした。

 長谷川氏はXGMFプロジェクトリーダーや5G-SDC運営委員長を務める。

2035年ビジョンの実現へ重要な一歩

 今後の展望として、JTBは2035年ビジョンとして掲げる「『新』交流時代のフロンティア企業」の実現に向け、本プログラムを重要な一歩と位置づけている。

 「交流創造事業」を推進するJTBだからこそ創造できる価値を大切に、産官学の連携をさらに深化させ、本プログラムを単なる人材育成に留まらない、サステナブルな社会貢献へと昇華させていく決意を示した。

 具体的には、2028年には参加企業10社・学生30名への拡大を目指し、より多くの企業と学生がグローバルな最新技術に触れ、実践的なスキルを習得できる機会を提供していく。

 また、本プログラムで得られた知見やネットワークを活かし、日本のデジタル化を加速させる新たな事業創出や、地域社会の活性化にも貢献していく方針。

 JTBは、これからも「人」と「情報」の交流を促進することで、未来を担う次世代IT人材の育成を支援し、日本の国際競争力強化、ひいては持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。

 
 
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