日本旅行協定旅館ホテル連盟(日旅連)の2026年度総会(第64回理事会総会)が3月4日、東京のホテルメトロポリタンエドモントで開かれる。開催を前に、日本旅行の吉田圭吾社長と日旅連の白石武博会長(沖縄県・カヌチャベイリゾート社長)に登場いただき、「日本旅行と日旅連、新たな理念のもと、共に発展へ」をテーマに語っていただいた。創業120周年という節目を終え、新たな5カ年の中期経営計画「新章」を始動させた日本旅行は、重要なビジネスパートナーである日旅連と共に、国内旅行の増売、日旅連会員施設への送客拡大に従来にも増して取り組む姿勢を強調した。
両氏が振り返る、2025年の旅行業界
猛暑や地政学リスクあるもおおむね順調
――(司会=本社取締役編集長・森田淳)昨年の国内旅行全般の振り返りを。
吉田 まずは大阪・関西万博。特に後半に盛り上がり、大盛況となった。
当社はチケット販売のコンソーシアムに入っており、全国から関西への誘客にもこのチケットを活用させていただいた。近隣の自治体の誘客施策にも関わらせていただいた。万博自体でも、パビリオンの一部運営や、そのスタッフの手配、スタッフの方々の宿泊や移動の手配など、さまざまな対応をさせていただいた。
夏の猛暑により、人の動きに変化が表れた。熱い中での外出を控え、少し時期をずらして旅行をしようという動きが出てきた。昨夏は7月5日に日本で大災害が起きるという予言が飛び交い、一部の国や地域からの訪日が減少するという現象も起きた。ただ、総じて言えば、インバウンドは順調に増え、ご承知の通り、年間で過去最高を記録することとなった。
インバウンドが増えたことで宿泊施設の単価が一気に上がり、日本人のお客さまがその状況についていけないという動きも見られた。インバウンドでは地政学的リスクが常についてまわるが今後はその対策も考えていかねばならない。
さまざまな出来事があったが、国内旅行については、おおむね順調に推移した1年といえるのではないか。

日本旅行代表取締役社長・吉田圭吾氏
訪日急拡大に危機感、受け入れ体制が不十分
白石 昨年のインバウンドが4268万人。過去最高を記録したのは結構なことだが、受け入れ体制がまだまだ不十分なのではないか。想定以上の人が来て、各地で弊害が起きている。
私は全国レンタカー協会の副会長も務めているのだが、会議で出る話題の6割くらいがインバウンド関連だ。旅行形態が個人化して、2次交通として全国でレンタカー利用が急速に拡大している。
白タクや違法民泊もしかりだが、近年こういった環境下で、法令を順守せずに営業をする人たちが一部で出てきている。訪日客の中では、「便利だからいいじゃないか」と、法令を意識せずに使ってしまう人がいる。レンタカーで事故を起こして病院で手当てをしてもらった後、治療費を払わずに帰国してしまったという話も聞いた。
これはインバウンドの急速な増大が、交通や医療といったわれわれの生活インフラに悪影響を及ぼしていることを意味している。国は2030年のインバウンドを今の1.5倍の6千万人にする目標を掲げているが、このままではこれらの問題が今の1.5倍発生することになる。地域の皆さんから「観光はもう、ノーサンキュー」と言われかねない。そんな危機感を持っている。

日本旅行協定旅館ホテル連盟(日旅連)会長・白石武博氏
――白石会長の地元、沖縄にはテーマパーク「ジャングリア」が開業した。
白石 実はまだ行けていないのだが(笑い)。沖縄での滞在時間が長くなり、周囲への波及効果も表れるものと期待している。
――国内では、クマの問題が観光にも影響を与えた。
吉田 当社の東北方面への旅行でも少なからず影響が出た。
白石 被害の出ている地域の皆さんが気の毒で仕方がない。実害もあったが、風評被害も大きかったのではないか。
沖縄も9.11(米国同時多発テロ)の時に風評被害を受けたので身に染みて分かる。報道の仕方に問題があると感じている。マスメディアには落ち着いた時のことも報道してもらいたい。
会社の動きと旅連の取り組み
一定の利益を確保、創業からの歴史描く小説も発刊
――昨年の会社の動きと業績について。
吉田 国内旅行については、インバウンドも含めておおむね順調に推移した。コロナ禍中に行っていた事業の一部がなくなったり、インバウンドでは情勢によって凸凹はあるが、おおむね順調にいっている。決算で正式にお伝えするが、一定の利益は確保できている。
――旅行業界全体で、海外旅行の需要がコロナ禍前の状況になかなか戻らない。
吉田 一時、自社ブランドのマッハ、ベストツアーの売り上げがほぼゼロになったが、この2026年度から、本格的に回復させるべく取り組みを進める。
――昨年は会社創業120周年。
吉田 さまざまなチャレンジをさせていただいた。大阪発草津(滋賀県)経由長野・善光寺行きという、創業当時に仕立てた団体臨時列車の復刻版を運行した。全行程およそ7時間の列車の旅だが、車内でさまざまなイベントを行ったり、地域の特産品を振る舞ったり、お客さまには飽きさせない工夫をして、ご満足をいただけたのではないか。
今はスピーディーに移動ができる時代。効率的な移動を選ぶこともいいが、行程の途中を楽しむ鉄道の旅、というのも今回のツアーで見直されたのではないか。
――周年記念でツアー以外にもさまざまな取り組みをされたようだ。
吉田 創業からの歴史を描いた「旅行屋さん 日本初の旅行会社・日本旅行と南新助」という小説が発刊された。草津駅で弁当の駅売りをしていた南新助が、地域の皆さんの要望に応えて団体旅行を始めるという、創業からの当社の歴史が描かれている。社員もそうだが私も改めてその歴史を学び、先駆者の取り組みに感銘を受けた。
白石 小説は私も読んだが、非常に面白かった。今の「人の好い日本旅行さん」のDNAが創業からこうやってできてきたんだなと読んでいて楽しくなった。
吉田 ありがとうございます。
白石 昨年は記念の年ということで、何か記念になることをと、会社の創業の地である滋賀県で総会を行った。総会を東京以外で行ったのは地震の被害を受けた熊本での2017年以来。地方での開催は事務局も何かと苦労が多く、大変なようだったが、県知事や市長にも来ていただき、非常に盛り上がった。これからの130周年、150周年、200周年に向けて共に進んでいこうと確認した意義ある総会だった。
また、恒例のREN―CUPも北陸の地で開催した。会場に輪島朝市の臨時出店をいただいたり、能登への観光コースを設定するなど能登の復興支援要素も加えた。日旅連会員だけでなく、日ごろから誘致事業を共に行っているNicやバス事業者の皆さまにもご参加いただき、日旅連らしい事業となった。
商談会に注力、インバウンドにも対応
――日旅連の事業について、さらに振り返りを。
白石 コロナ禍の時は会社との距離が物理的に離れてしまったが、何とか元の距離に近づけようと、昨年も会社側と旅連の会員による商談会の開催に力を入れた。本部主催の商談会は東日本開催と西日本開催を合わせて約400人ものセールス担当の方に参加いただいた。このほか、各支部連合会主催による地域での商談会も数多く開催いただいた。
会社の方々とリアルに会い、コミュニケーションを図る絶好の機会であり、会員は非常に気合が入った。本部や一部の支部連合会の取り組みを見て、自分たちの地域でも行いたいという声が多く聞かれてきた。本部としては、地域の取り組みをどんどん支援するという流れになっており、今後さらに、この動きは活発になるのではないか。
もう一つの取り組みがインバウンド。今までどちらかといえばアウトバウンドの取り組みだった実質的に日本旅行が運営する「ジャパンウィーク」を双方向の人的交流につなげようと3年前から会社が取り組んでおり、われわれも同時期からこのイベントに会社側から支援いただき、参加をしている。2023年のスペインのセビリア、2024年のフランスのコルマールに続き、昨年はイギリスのマンチェスターで開催。現地の旅行会社との商談会もロンドンで行われた。
現地に行って分かったことは、私の地元の沖縄は、日本では一流の観光地といわれているが、向こうではどこにあるのかも分からない。われわれがスペインのカナリア諸島がどこにあるのか分からないことと同じようなもの。15分から20分の商談時間のうち、多くの時間がロケーションの話になってしまう。
施設単独ではおろか、沖縄という小さなエリア単体では、ヨーロッパの方々と直接お会いし、話をすることもなかなかかなわない。日本旅行という大きなインフラに乗ってこそお会いできるのだと改めて感謝をしているところだ。1年目、2年目は手探りなところもあったが、昨年は準備も万端で、会員施設への送客、日本旅行のインバウンド向け商品「レッドバルーン」の販促へしっかりと話ができた。
吉田 ジャパンウィークは、今年はイタリア・シチリア島のパレルモで、商談会はローマでの開催を予定している。
白石 日本旅行のオンリーワンの取り組みであり、今年も期待している。
――宿泊業界は人手不足が深刻だ。その中で日本旅行は外国人材を宿泊施設など観光業界に紹介する事業を始めた。
吉田 「特定技能」の在留資格を持つ外国人を施設に紹介できる資格を昨年、取得した。中央アジアと東南アジアの4カ国と人材交流に関する連携協定を締結。海外の大学とも協定を締結し、日本の企業に海外の人材を紹介するためのベースを整えた。日本の文化とルールをしっかり守り、働いてもらえるような人材を育てる取り組みを鋭意進めているところだ。人材紹介の実績は既に旅館とJRグループの企業を含めて100人に迫る規模となっている。
白石 非常に意義のある取り組みだ。外国人材については、さまざまな企業や団体が手掛けているが、どこを信用してよいか分からないところがある。日本旅行の取り組みだけに、しっかりとしたクオリティを担保しているはずで、施設側にとっても安心してお願いできる。

対談は東京の日本旅行本社で実施
どうなる今年の旅行業界
基調は昨年と変わらず、上手な財源活用を
――国内旅行を中心に、今年の業界展望を。
吉田 イレギュラーなことが起きるかもしれないが、昨年同様、おおむね順調に推移するだろう。個々の出来事にはしっかりと対処しながら、取り組みの基本を崩さずに、販売につなげていきたい。
白石 国内に関しての見方は社長と同様だ。インバウンドについては、さまざまなことが起きているが、こちらも基調は昨年と変わらないだろう。先ほども触れたが、むしろ一部で急激に増えたことによる問題にどう対処するか。減らすという話ではなく、お客さんがたくさん来てもしっかりと対処して、地域社会に悪影響を及ぼさないようにうまくコントロールすることだ。
出国の際の国際観光旅客税が7月から現行の千円から3千円に上がる。年間1500億円ほどの税収になると聞いた。沖縄県でも来年度から宿泊税も導入される。これらの財源をうまく使ってほしい。
新中計「新章」発表、DX推進も
――会社は昨年末に新しい中期経営計画を発表した。
吉田 2026年度から2030年度までの5カ年計画で、タイトルは「新章」。これまでの120年の歴史をしっかり踏まえつつ、新たなステージに進んでいこうという意思を込めている。今まで行ってきたことを否定するのではなく、しっかりと受け止めることが大前提。その上で時代に即した新たな取り組みを進める。
柱の一つは、成長分野に事業をシフトすること。例えばインバウンド。1月1日の組織改正で、今までさまざまな部署に分散していたインバウンドに関する機能を「インバウンド・グローバル事業本部」という組織を新設して一つにまとめた。
DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上も柱の一つだ。今まで多くの人手を割いていた業務を、AIを含めたDXの力で効率化するとともに、「人」にしかできないことについては徹底的に追求して取り組む。これは日旅連の会員の皆さまとの関係、地域との関係をより強固にするための取り組みも含まれる。
新たな事業の核をつくることにも注力する。昨年、記者発表した宇宙旅行に関する事業もその一つだ。壮大な取り組みに見えるが、宇宙に関する子供たちへの教育や体験プログラムの実施など、国内旅行との接点もあり、日旅連の皆さまとも決して無関係ではない。
――中計には売り上げや利益目標など、具体的な数字は示されていない。
吉田 この5年間は、次のステージに向けた土台作りがメインで、派手な目標は立てていない。新たな次の時代に向けて、着実に歩を進める。
白石 最大の目標で、会員が求めているのは宿泊券の増売。その目標に向けて、新たな中計と歩調を合わせて取り組む。
吉田 今年度は日旅連の会員施設に集中送客するキャンペーンを行う予定だ。鋭意、プランを練っているところで、近々発表できる。
白石 「待ってました!」という感じ。大いに期待するところで、成功に向けてわれわれも頑張らせていただきたい。
吉田 個人旅行、団体旅行を問わず、会員の皆さまにしっかりと送客ができる仕組みをつくりたい。
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――日旅連の今年度総会が3月4日に東京都内で開かれる。吉田社長から日旅連会員、白石会長から日本旅行の役員、社員への要望、メッセージを。
吉田 災害や海外での戦火、コロナ禍と、今までさまざまな苦難があり、われわれも道を踏み外しそうになることがあったが(笑い)、何とか持ちこたえてここまで来られたのは日旅連の皆さまのおかげだ。
創業から120年間の長きにわたり、日旅連の皆さまにはさまざまな場面でお助けいただきここまで育てていただいた。これからの100年も変わらずにご愛顧をいただければと思う。
白石 会社の新中計を軸に、北海道から沖縄まで、オール日旅連で今年度は事業を進める。
吉田社長の素晴らしいリーダーシップのもと、どうすればビクトリーにたどり着けるのか、日本旅行とウィンウィンになれるのか、会社の皆さまにお示しをいただければと思う。新しい年度のスタートを前に、強く感じているところだ。

宿泊増売、地域の課題解決へ―固い握手を交わす両氏




