【VOICE】台湾修旅の「質」を問い直す 日勝生加賀屋国際温泉飯店 董事兼顧問(取締役顧問) 德光重人氏


德光氏

「日本」を再発見する学びの場へ

 私は長年、台湾で日本旅館「加賀屋」の経営に携わり、同時に企業研修や修学旅行で訪れる多くの日本人に対し、日台の歴史やビジネスをテーマに講演を行ってきた。台湾への修学旅行を実施する学校は年々増えているが、近年の修学旅行のあり方に対し、拭いきれない危機感を抱いている。端的に言えば、台湾を訪れる「目的の軸」が極めて希薄なのである。

 現在の台湾修学旅行の多くは、定番の観光地めぐりに終始している。現地校との交流を組み込む学校も多いが、それ自体が目的化しており、内容も一辺倒だ。もちろん交流は意義深い。しかし、なぜ「台湾」なのか。その必然性が見える行程は驚くほど少ない。これは引率する教員の勉強不足か、あるいは旅行会社の提案力不足か。今のままでは「場所を変えただけのレクリエーション」に終わりかねない。

 私は講演の際、生徒たちに「海外でのビジネス」や「おもてなし」の本質を伝えている。国際感覚を養うには、まず自分たちの「日本」を深く知ることが不可欠だからだ。例えば、日本ならあうんの呼吸で伝わる「おもてなし」を、文化の異なる外国人にどう解説し、心に届けるのか。その過程で直面する摩擦をどう解決していくのか。こうした実体験を語ることで、異文化理解とは単なる語学力ではなく、自国のアイデンティティを再定義する作業であることを知ってほしいと考えている。

 また、台湾には日本がかつてこの地を統治した時代の記憶が今も息づいている。台南の「烏山頭ダム」を訪れ、八田與一技師が成し遂げた偉業が、今なお台湾の人々に感謝され、現在の日台関係の礎となっている事実を学ぶ。日本統治時代の開発を多角的に検証し、先達の志を直視することこそが、真の「探究学習」ではないだろうか。さらに、台湾で挑戦する社会人や留学生という「一歩先を行く先輩」との対話を通じ、海外で働くリアルを肌で感じる工夫もあって良いはずだ。

 台湾は単なる「親日的で安全な観光地」ではない。過去から未来へと続く深いつながりを通じ、日本人としての誇りと自覚を呼び覚ます比類なきフィールドである。旅行業界、教育関係者、そしてわれわれ現地側が三位一体となり、表面的な観光を超えた「骨太な修学旅行」を再構築しなければならない。

 若者たちが台湾での学びを糧に、広い視野を持って世界へ羽ばたく日が来ることを、私は心から願っている。


德光氏

【九州支局長 後田大輔】

 
 
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