青田氏
「来訪者と住民が共に守り育てる観光地」体現
日本の中山間地域では、人口減少と高齢化が深刻な問題となっています。京都府南丹市美山町もその一つで、人口は約3200人。生産年齢人口はこの20年で半減し、高齢化率はすでに50%を超えています。かつて林業で栄えた地域も、1970年代以降は産業の衰退とともに急速に過疎化が進みました。
その美山町が選んだ道が「観光によるまちづくり」でした。1980年代後半から住民主体で景観保全と観光の両立を進め、1993年には重要伝統的建造物群保存地区に選定。観光協会やDMOの活動を通じて、観光客数は1985年比でおよそ7倍に増え、体験型プログラムや教育旅行も拡充されました。新しい雇用が生まれ、移住者が定着するなど、確かな成果を上げてきました。
しかし現実には、人口減少は依然として大きな課題です。人口は毎年約100人減少し、減少による地域消費は、年間で約1・5億円ずつ減少に相当すると言われています。観光消費総額はコロナ後に回復したものの、1人当たりの消費額はなかなか伸びず、地域経済を支えるには観光の「質」をさらに高めていく必要があります。
そんな中で、美山町が2021年にUNWTO「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に認定されたことは大きな励みになりました。国際的な評価が地域ブランド力を押し上げ、他の観光地との連携や、外部からの人材を呼び込む力も強まっています。人口減少と高齢化が進む中で、観光が地域を支える柱として機能しうることを示しているのです。
私たちの取り組みを通して、旅行業界全体また、同様の中山間地域に対しての示唆が2点あります。第一に、人材育成と担い手確保を最優先課題とすること。観光は人に依存する産業であり、安定した雇用条件やキャリアパス整備が求められます。第二に、観光を「量」から「質」へと転換すること。体験や学びを重視した高付加価値商品によって、1人当たりの旅行価値を高めることが不可欠です。同時に、高付加価値とともに、域内調達率を高めることは、地域内への経済波及効果につながるとともに、地域内所得の向上につながります。
美山町の取り組みは、「来訪者と住民が共に守り育てる観光地」という考え方を体現しています。旅行業界に携わる私たちも、人口減少を前提とした社会の中で、観光をどのように価値あるものにしていくかを考える時期に来ています。
観光の未来は「人」がつくるものです。地域の人、訪れる人、そして観光を支える私たち。三者が一緒に新しい仕組みを育てていくことこそ、人口減少社会における観光の使命なのではないでしょうか。

青田氏




