新津氏
文化や歴史感じる「イミ消費」
小売業が地域経済のハブ機能担う
訪日外国人旅行者が日本を訪れる目的の第2位はショッピングです。インバウンド消費の27%が買い物による支出で、その規模は2・5兆円を超えました(2025年観光庁「インバウンド消費動向調査」より)。観光における買い物は、単なるモノの購入としての価値を超え、「イミ消費」―すなわち、地域の文化や歴史をモノを通じてストーリーとして伝え、持ち帰っていただく消費へと進化しています。
イミ消費は、買い物を通じてモノを「地域の思い出」や「体験の象徴」として記憶し、旅の余韻を母国や日常生活へと持ち帰る行為です。伝統工芸や地場産品、地域ブランドの食品など、あらゆる商品がその土地の自然や文化を映し出し、世界へ拡散するメディアとなります。
たとえば、産地の風土や生産者の想いが語られる日本酒、何代にもわたり技を受け継いできた職人の道具、地元の果実を使った菓子などは、購入後も語られ続ける「物語」を宿しています。
小売業は、地域経済のハブ機能を担っています。1次産業が素材を供給し、2次産業が加工し、3次産業が販売し、そして4次産業が情報発信によって価値を高める。イミ消費は、こうしたすべての産業を結び付け、地域全体で物語を紡ぐ仕組みです。
地域の小売店や商店街では、店主や店員が果実のおいしさの理由や、工芸品を支える匠のこだわりを、まちの語り部として旅人に伝えています。その語りこそが観光客の心を動かし、再訪や紹介へとつながっています。
こうした取り組みを制度面から支えてきた消費税免税制度は、本年11月にリファンド方式に改正されます。免税販売はインバウンド消費全体の約4分の1を占め、地方の中小事業者にとっても有効な誘客手段です。制度そのものに加え、免税店シンボルマークが「訪日ゲストを歓迎するまち」の意思表示として機能している点も見逃せません。
観光とは、風景を見るだけでなく、文化を持ち帰る行為です。買い物を通じて地域の歴史や暮らしを感じていただく「イミ消費」こそが、特に地方都市における観光誘客の原動力となります。
これからは「何を買ってもらうか」ではなく、「何を伝えて帰ってもらうか」。その答えを、全国の店先から発信していきたいと思います。

新津氏




