【駅メロとわずがたり50】JR高田馬場駅② アトムと歩む街づくり/JR高田馬場駅(2) 「アトム通貨」の普及 藤澤志穂子


「アトム通貨券」

「アトム通貨券」

 高田馬場を歩いていると「アトム通貨」のポスターをよく見かける。地域振興を目的に特定の地域内で流通する「地域通貨」で、2004年4月から始まった。1馬力=1円として使用でき、10馬力、50馬力、100馬力、500馬力の4種類がある=写真・アトム通貨実行委員会提供。

 早稲田・高田馬場エリアで飲食からコンビニ、不動産、薬局まで130店以上の加盟店がある。付近に多いアジア系店舗の加盟も増えている。流通は、例えば加盟店にマイバッグを持参、飲食店でマイ箸を使用すると進呈される。

 各種イベントでも発行されており、毎月の地域清掃に参加すれば50馬力、母の日に合わせてお母さんの似顔絵を描けば50馬力がもらえ、似顔絵は街路灯に掲示された。2024年8月から9月にかけて実施されたスタンプラリーでは、対象店舗で飲食し、インスタグラムに投稿したら100馬力もらえる遊び心満載の取り組みが人気を呼んだ。

 「アトム通貨」は手塚治虫の著書「ガラスの地球を救え」にある、「地域、環境、国際、教育」の四つの理念に基づいている。手塚プロダクションがキャラクター管理やイベント、加盟店の管理など運営全般を担当し、早稲田大学のサークルと、早稲田と高田馬場の二つの商店街の4者で実行委員会を構成している。全国に三つの支部があり、そこでもアトム通貨が使える。

 きっかけは2000年ごろ、バブル経済崩壊で地域経済の活性化を目的に全国で普及が始まったことだった。そのころ、早稲田大学のボランティアセンターと、手塚プロダクションとで同時期に地域通貨の導入を検討していたことがわかり、一緒に取り組むことになった。「当時は子供たちが犯罪に巻き込まれるケースも多く、子供たちを見守る地域との接点が作れないかという気持ちがありました」(手塚プロダクションの日高海さん)。

 地域通貨の中には、浸透せず立ち消えになったものも多い。スタートして20年がたち、今も健在な理由は、地域の人々の「アトム愛」が背景にある。手塚プロはCSRの観点からも協力を惜しまない。日高さんは「柔軟に広くつながりが持てるゆるいコミュニケーションツールとしたことでご長寿通貨に成長できた。高田馬場がアトムの街であるという誇りを地域の皆さまにこれからも持っていただき、より地域づくりに貢献したい」と話す。最近では電子化された地域通貨も増えたが「紙幣でしかできない、アナログだからこそできるコミュニケーションを大切にしたい」という。

 手塚作品には「戦争の悲惨さ」「平和の大切さ」「命の尊さ」の「三つが根底にある」と手塚プロダクションの、松谷孝征社長は言う。「マンガの地位を上げるため戦ってきたんですよ」。没後35年以上になる手塚の願いは、アトムを通じ確実に地域に根差している。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。

(月1回掲載)

「アトム通貨券」
「アトム通貨券」

 
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第39回「にっぽんの温泉100選」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2025年度「5つ星の宿」発表!(2025年12月15日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第39回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング 」(2026年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト50を発表!

2025年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング」(2026年1月12日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒