【ちょっとよろしいですか 173】温泉地の魅力発信と差別化 山崎まゆみ


 先月の観光経済新聞チャンネルの出演の際には多くの方がご視聴くださり、感想や質問もお寄せいただきまして、誠にありがとうございました。

 「温泉地の魅力発信の心得~他の温泉地との差別化・宿のユニバーサルデザイン化について」と題して、いくつもの要素を盛り込んだことで、言葉足らずだった点もありました。熱心なご視聴ゆえの的確なご指摘もいただきました。御礼を申し上げます。

 特に「他の温泉地との差別化」という点は情報不足でしたのでここで補足いたします。 

 利用してもらうお客の視点に立って、外国人だけでなく、日本人にも、お客から「喜び」「驚いて」もらえる要素を探すことがまず重要です。

 滞在中に、いかに「アメージング」という感動をもたらせるか。そのカギは地域性の反映です。独自の地域性を生かした町づくりによって、情報発信においても差別化ができるのです。

 最も重要なのは、地域の唯一無二の魅力を掘り起こし、磨き上げること。決して、軽いノリのはやり言葉で温泉地をPRしてはいけません。結局は二番煎じの言葉でしかなく、メッセージ性が弱まります。まずは私の考え方を示したうえで、独自の地域性を魅力に変えた温泉地を具体的に挙げていきます。

 まず兵庫県の城崎温泉。「日本一、浴衣が似合う温泉街」と自負しているのには理由があるのです。

 城崎は大正14年の北但大震災で町が壊滅しましたが、その復興の過程で、町を一つの旅館と見立て、宿を拠点にした町歩きしやすい環境づくりに成功しました。

 メインストリートの柳通りの真ん中には大渓川が流れ、その両脇には柳の木が風にそよぎ、木造の旅館が立ち並ぶ。

 その町並みは実に美しく、特に明かりの使い方のうまいこと。ほのかな明かりが町を照らす夜はいっそう温泉情緒が増すので、散策したくなります。

 佐賀県の嬉野温泉は地域の地場産業であるお茶農家と結びついた観光コンテンツを造成しました。

 「この高台に立った時に、素晴らしい景色と空間だと思いました」とは、嬉野温泉で最も古い旅館「大村屋」の社長で、嬉野温泉観光協会会長の北川健太さんのお言葉です。

 北川社長に案内していただいたその高台は、茶畑に囲まれており、白木の板が張られた30畳ほどのスペースに座ると、目線がお茶の木と同じ高さ。茶葉の匂いが立ち込める中で嬉野の風土を体感できます。これを「茶空間体験」と呼び、ここでお茶をいただくのが「嬉野ティーツーリズム」です。

 嬉野名産の嬉野茶の美味なこと。お茶風味が口に残る奥深さを嬉野で知りました。

 2017年から実施しているこの取り組みは地元のお茶農家さんへの支援にもつながっていきます。

 三つ目は、昨年5月にNHKの「プロジェクトX」で紹介された黒川温泉です。番組では苦境からの逆転劇が描かれていました。

 今から40年前、空前の露天風呂ブームの中、黒川温泉でも予約が入るのは風呂がある宿のみ。ならば露天風呂がない宿のお客には、露天風呂がある宿まで行って入ってもらおうという発想で生み出されたのが「湯めぐり手形」です。ただ、すぐに人気が出たわけではなく、時間をかけてマスメディアに紹介されながら、次第に評判を呼んでいったのです。継続は力なりです。

 次回は、先日滞在した黒川温泉での体験を踏まえて、その人気の秘密と、さらに他の温泉地との差別化についてつづります。

 (温泉エッセイスト)

 
 
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