【一寸先は旅 人 宿 街 46】マイカー以外は旅が困難 神崎公一


 大分と熊本をつなぎ九州を横断する豊肥線に乗った。3泊4日の旅。NHKの六角精児「飲み鉄本線日本旅」が12月に放送され、旅情を誘われたからだ。1月半ばの旅を続けている4日間は、あいにくの最強寒波に見舞われ、九州といえども冷え込みはきつかった。

 旅行を始めて3日目の朝、旅館から阿蘇駅行きのバス停に徒歩で向かった。阿蘇一帯は雪化粧、粉雪が舞う中、10分ほどでバス停に着いた。そこには20代半ばと思われる男性がいて、「旅館で聞いたけど、バスは雪のため運休するかもしれないですよ」と教えてくれた。

 バス会社のウェブを見ると確かに運休と書かれていた。バス停まで足元が悪い道をキャリーケースを引きずり歩いてきたのにと、がくぜんとした。これでは熊本行きの列車に間に合わない。

 その男性は駅まで走っていけば間に合いそうだと持ちかけてきたが、荷物も少なく俊敏そうな彼とはとてもでないが付き合えない。タクシーを相乗りして駅まで行こうとタクシー会社に電話をするも、タクシーは出払っているとのつれない返事だった。その時、運良く通りかかった空車のタクシーを捕まえることができ、無事予定通りの列車に乗れた。

 私の泊まった宿では道路の運行状況は掲示されていたが、バスの運休は伝えてくれなかった。チェックイン時に列車とバスで来たと話していたにもかかわらずだ。マイカー以外で訪れる宿泊者は念頭にないのだろう。

 知人にこの話をしたところ、マイカーを所有率が低い若者ならまだしも、シニアは車との固定概念があるのではないかと見立てを述べた。さらに地方になれば、移動手段は車というのが当たり前だろう。1世帯に1台ではなく、1人に1台も珍しくない。一方、私は車を所有していない。都内に住み交通の便が良いことに加え、渋滞や駐車場代の高さが理由だ。

 政府は観光客、特に訪日外国人を含め地方への周遊促進を掲げている。そのためには地方の観光地の足の問題、いわゆる2次交通の整備が大きな課題だ。

 また、シニア層の免許返納、若者の車離れが進んでいることからも、2次交通の充実が欠かせない。廃線や減便も相次いでいる。

 全国的にタクシーやバスの運転手不足も2次交通に影響をおよぼしている。その解決策の一つとして、外国人の運転手の採用が広がっている。しかし、そのハードルは高い。

 それにはまず、日本の運転免許を取得する外免切り替えを済ます。そのうえで、タクシーやバスの運転が可能となる特定技能ドライバーとして就労するには、第2種運転免許と日本語能力と技能評価試験にも合格しなくてはならない。しかも、政府は25年10月、外免切り替えの運用を厳格化したのも向かい風となっている。

 東京や大阪、京都などの大都市だけでなく、地方の観光地を安心して便利に巡るには、観光業に携わる関係者が公共交通機関を使った観光客への目配りと、バスやタクシーの運転手不足の解消の二つが欠かせない。阿蘇山ろくで、寒さに震えながら来ないバスを待っていた時、マイカー以外の旅行者をおもんばかってほしいと強く感じた。

 (日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)

 
 
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