地元実行委員長(ANTA奈良県支部長)の中島昭人氏
全国旅行業協会(ANTA、近藤幸二会長)は2月11日、奈良県の観光振興と国内観光の活性化を図るイベント「第20回国内観光活性化フォーラムinなら」を、なら100年会館(奈良市)で開催する。今回の大会スローガンは、「建国の地 奈良からふたたび」。“日本の始まりの地”奈良の原点を見いだし、深掘りし、故郷を再び元気にする―という思いが込められている。歴史的遺産だけでなく、文化や自然、食、その他地場産業などの魅力を、基調講演やパネルディスカッションなどを通して発信する。
奈良も本格的に訪日誘客を 住民の「誇り」で地域活性化
――奈良県の観光の現状についてどのようにお考えですか。
奈良県の観光における最大の課題は、日帰り客が多く宿泊につながりにくい点だ。大阪や京都から近いという利便性が逆に作用し、地域全体にお金が落ちにくい構造になっている。かつては修学旅行への依存度が高かったが、近年は外資系ホテルの進出もあり、多様な旅行者を受け入れる態勢が整いつつある。
奈良の強みは、圧倒的な歴史的遺産の数だ。すでに三つの世界遺産を持つほか、今年には「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が登録される可能性があり、実現すれば国内で唯一、四つの世界遺産を持つ都道府県になる。日本の歴史の原点ともいえるこの地で、その深い魅力を伝えていくことが重要だ。
――そのような中、今回は奈良県で開催される。
今大会のスローガンの「ふたたび」には二つの意味が込められている。一つは、日本の建国の地である奈良から、観光を再び活性化させていこうという決意。そしてもう一つが、「二つの旅」の実践だ。これまで日本の旅行会社は、地元住民を県外・海外へ送り出す「アウトバウンド」が中心だった。だが人口減少が進む中で、これからは海外からの旅行者を地域に呼び込む「インバウンドビジネス」にも本格的に取り組む必要がある。
われわれのような地域の旅行会社が持つネットワークを最大限に生かし、アウトバウンドとインバウンドの両輪で事業を展開していく。その新たなスタート地点にしたいという思いが込められている。
――インバウンドの取り込みや地域活性化に必要なことは。
産官学が一体となった取り組みが不可欠だ。私たち旅行会社が地域のキーパーソンとなり、リーダーシップを発揮していく必要がある。そのためには、自分たちが住む街の歴史や文化、魅力を深く知ることが求められる。
例えば、私が活動の拠点とする御所市では、20年以上続く「御所まち霜月祭(そうげつさい)」というイベントを毎年11月の第1日曜日に実施している。古民家を一般開放し、地域住民がおもてなしをすることで、多くの人が訪れるようになった。
このイベントの企画当時、御所の商店街からは活気が失われつつあった。地元商工会議所の商業部会で企画がスタートし、私も立ち上げから参画してきた。継続的な活動を通じて、住民自身が「自分たちの街はこんなに素晴らしいんだ」と誇りを持つこと。それが地域活性化の最も大きな力になると信じている。
――今大会で実施するエクスカーションのうち、奈良女子大学との連携で実現したコースも目玉となっています。
従来の学生コンテスト形式から一歩踏み出し、学生たちの若い感性や斬新なアイデアに、われわれ旅行業のプロが持つ商品造成のノウハウを掛け合わせることで、より実践的で魅力的な旅行商品が作れるのではないかと考え、実施に至った。
予想をはるかに超える40人もの学生が参加し、最終的に生まれた10の企画案の中から、特に優れた二つのコースを実際のエクスカーションに組み込んだ。この取り組みは、双方にとって大きな学びとなり、今後のモデルケースになるのではないかと期待している。
――中島委員長が思い描く、県内回遊の具体的な構想は。
より深い文化体験を求める旅行者を、明日香村や吉野町など南部へいかに誘導するかが鍵になる。
その仕掛けづくりとして、単に移動手段として利用されてきたJRローカル普通列車や、途中の駅舎を観光資源として光を当てた、奈良県内を環状に走る周遊ツアーを大会開催日に合わせて企画した。行程の途中でバスなどにも乗り換えるが、このように鉄道を利用して奈良県内を周遊する仕掛けをもっと作っていく必要がある。これまで光が当たってこなかった観光資源を掘り起こし、新たな人の流れを作っていきたい。
――フォーラムへの意気込みをお願いします。
県支部のメンバーには常々、「このフォーラムはゴールではなく、スタートラインだ」と伝えている。イベントの成功はもちろん、これまで築いてきた行政や地元事業者の方々とのつながりを、いかにして次のアクションに結び付けていくかが最も重要だ。
当日は、日本酒発祥の地として奈良が誇る地酒や、御所の大和芋から生まれた焼酎「みかけによらず」、大和牛・大和ポーク、そして柿の葉ずし、三輪そうめんといった素晴らしい「食」の魅力も発信する。「奈良はうまいものなし」という昔からのイメージを払拭し、地域の産品を全国に広めるお手伝いもしていきたい。
大会の「地域の魅力を掘り起こし、発信する」という理念に立ち返り、「建国の地 奈良からふたたび」というスローガンのもと、観光の新たな一歩を踏み出す大会にしていきたい。

地元実行委員長(ANTA奈良県支部長)の中島昭人氏
奈良女子大と連携 新たな着眼点でツアーを企画・造成
大会の前日・翌日には、奈良県内の新たな魅力を発掘できるエクスカーションが全8コース(A~H)催行される。このうち、心身の健康をテーマに宇陀地域を巡るGコース、月ヶ瀬・田原地区の昔ながらの茶畑を訪問するHコース(いずれも12日出発)は、観光を学ぶ奈良女子大学の学生と奈良県旅行業協会との共同プロジェクト。学生が持つ新たな着眼点に基づき企画立案されたプランを、県旅行業協会が実現性と安全性を検証し、具体的な旅行商品として完成させた=下図。今大会では、こうした産学連携事業も活発に行われている。

奈良女子大学と連携して企画したツアー(G・Hコース)の工程表
ほか、A~Fコースは次の通り。
【Aコース(奈良)】
「光と静寂が満ちる夜、奈良は神秘に変わる。なら瑠璃絵と東大寺『大仏殿夜間特別開扉』」
【Bコース(飛鳥)】
「日本の国のはじまり飛鳥 古代の歴史遺産探訪」
【Cコース(橿原)】
「神話と現代史を実感する豪商の町『今井町』と日本のはじまり橿原神宮(正式参拝)」
【Dコース(桜井)】
「歴史香る総本山長谷寺と大神神社。奈良の味覚と名産に出会う一日」
【Eコース(奈良)】
「鹿寄せから始まる静寂な朝 東大寺と奈良の迎賓館『料亭 菊水楼』」
【Fコース(大和郡山)】
「今こそ脚光!『豊臣兄弟!』ゆかりの地、大和郡山を訪ねて」
日本旅行とも連携、県内周遊ツアーを催行
日本旅行は、大会が開催される2月11日、県内を走るJRローカル線を活用した旅行商品「はじまりの聖地飛鳥と大河ゆかりの大和郡山を巡る! 奈良歴史探訪日帰りツアー」を催行する。奈良県旅行業協会との共同企画で、県内を鉄道と貸し切りバスで周遊。1日かけて、酒蔵や寺院、史跡や観光施設も散策する。
ツアーは朝8時15分、JR奈良駅から始まる。桜井市の三輪駅まで万葉まほろば線(桜井線)で移動した後、近隣の大神神社を参拝し、日本酒「みむろ杉」「三諸杉」の蔵元・今西酒造を見学。希望者は試飲も可能だ。
その後は貸し切りバスに乗車し、飛鳥地区へ移動。飛鳥資料館で歴史の知識を深めるほか、古代時計「飛鳥水落遺跡」や飛鳥寺の見学などを楽しめる。昼食は、石舞台古墳を間近に望む体験型ホテル「ブランシエラ石舞台テラス」で、石舞台定食と奈良県産野菜のハーフブッフェをいただく。
食後は、藤原宮跡を車窓から見学した後、大河ドラマ『豊臣兄弟!』ゆかりの地・大和郡山地区に移動。郡山城跡や春岳院の見学、藍染め商の町家を再現した「紺屋」や、「金魚アスリート」(柳町商店街)の自由散策も盛り込んでいる。
午後5時半ごろには、奈良公園一帯で開催される、冬の幻想的なイルミネーションイベント「なら瑠璃絵」の会場に到着後、自由見学という形で解散する。

石舞台古墳
奈良県の最新トピックや注目スポットも
■「四つ目の世界遺産登録」を目指して
現在、奈良県は「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」を県内四つ目の世界文化遺産として今年中に登録することを目指している。6世紀末から8世紀初頭の建築・土木技術を用いた宮殿や官衙(かんが)(役所)、墳墓、仏教寺院跡など22の遺跡を中核とした遺跡群で、古代宮都の形成を示す東アジア唯一の証拠となっている。後の平城京や平安京に大きな影響を与えたとされる。
■『豊臣兄弟!』ゆかりの地も多数存在
豊臣秀長が、兄・秀吉を支える姿を描く、今年放送のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。奈良県には、宇陀市や高取町など、県内各地に秀長ゆかりのスポットが多数存在するが、中でも秀長が城主を務めた郡山城があったのが大和郡山市だ。今年3月2日には、DMG MORIやまと郡山城ホール1階で、展示企画「豊臣兄弟! 大和郡山大河ドラマ館」がオープン。2027年1月22日までの間、時代背景や登場人物、衣装や小道具を展示する(年末年始は休業)。





