講演する谷川浩司氏
藤井竜王・名人強さの理由は
序盤の長考が財産に
日本専門新聞協会(理事長・積田朋子観光経済新聞社社長)が主催する新春講演会が1月29日、東京都千代田区の経団連会館で開かれた。将棋の十七世名人、谷川浩司氏が「ビジネスに活きる勝負のこころ~AIと藤井竜王・名人の活躍で進化する将棋界」と題して講演した。
谷川氏は、中学生で四段に昇段してプロ棋士に。1983年、名人のタイトルを当時の最年少記録となる21歳2カ月で獲得した。通算5期以上が条件の永世名人の資格を得て十七世名人。日本将棋連盟の会長も務めた。今も現役で戦う。
終盤の攻めの鋭さから「光速の寄せ」といわれた棋風で、竜王、名人などのタイトルを獲得してきた谷川氏は、「直感」というのは知識、経験、個性、流れによって生み出されると述べた。常識や本筋が分からないとプロになれないが、それだけでは超一流になれない。「常識外の最善手を発見するのが将棋の醍醐味(だいごみ)」と語った。
AI(人工知能)の将棋ソフトがトップ棋士に勝ち、AIを使った研究が棋士の日常となり、テレビやネットの将棋観戦ではAIが示す評価値にファンが一喜一憂する時代に。AI時代への向き合い方では、「まず自分で考えることが大事。考えて一つの結論を出した後に、AIの力を借りて最終的な自分の結論を出す。考えることを放棄すると、人間の成長が止まってしまう」と述べた。
谷川氏の記録を破って20歳10カ月で名人となるなど、数々のタイトルを獲得し、将棋界の顔となった藤井聡太竜王・名人については、「AIの世代で使い方に慣れているだろうし、コンピューターが好きで、自分で高性能のパソコンを組み上げたりするようだが、ただそれで強くなったわけではない」として、「長く集中していられる。頭の体力が桁違い。計算も読みも早い」と指摘した。
藤井竜王・名人の強さの一つに、序盤で長く考え込むことをいとわない姿に触れ、「序盤のどう指してもあまり変わりがない局面では、少し考えたら指してしまう人も多いが、藤井さんは自分が研究していない手、特別な新しい手を指された時には必ず長考する。そこで考えたことが財産で、その蓄積として今に至っているのではないか。指した手は全棋士が共有する情報になるが、指さなかった手はその人だけの財産だ」と述べた。

講演する谷川浩司氏




