【VOICE】光を観る旅―能登で見つけた生き方 キャリアコンサルタント 新井(五十嵐)惠美氏


自分の居場所探しが観光の醍醐味

 昨夏、亡くなった祖母の遺品を整理していると1994年に祖父母が東京から能登を訪れた際の写真が出てきた。老舗百貨店が企画したツアーで輪島キリコ会館と千里浜を訪れた時のもので、少しすました表情の祖父母が写っていた。

 昨秋、私はそのキリコ会館を訪ねた。そこには2年前の元日発災当時のままの姿があり、自然の力の脅威を静かに物語っていた。

 私が初めて能登を訪れたのはちょうど昨春「もう能登に来ていいって!」「能登と友達になってください!」という声に導かれてだった。ゆえに私は、震災前の能登を知らない。祖父母が当時味わった能登の美食や、そこに流れていた空気を想像しながら、震災を経て生まれる、新たな能登の姿を一人思い描くのであった。

 報道にもあるようにいくつかの宿泊施設は営業を再開。地震と大雨で一時は通行止めだった県管理道路も、昨秋には13カ所を残すまでに復旧(25年10月石川県発表より)している。訪問を重ね、能登で暮らす方々との会話から、一人一人の復興の物語が見えてきた。

 と同時に、ここで暮らす人々に共通する価値観にも気づかされた。それは、自分より周りの幸せを優先する能登の人々の生き方だった。

 「能登はやさしや土までも」という言葉がある。実際に訪れて、この言葉の意味を深く実感した。震災で物理的な観光地の姿は変わったが、復興の途上にある今もなお、ここにしかない営みと人の温もりが息づいている。

 祭りを支える人々の熱量、季節と共に移ろう風景。その一つ一つに触れるたびに能登の魅力を五感で感じる。人と風土に触れる中で、“自分にあう場所”で自分らしく生きることの尊さに気付かされた。

 そんな「自分の居場所探し」が、これからの観光の醍醐味(だいごみ)の一つになり得ると感じている。人生100年時代と言われる今、多様な生き方が広がるなかで、人生の第2章、第3章を過ごす場所探しの旅があってもいい。

 美しい景色や美食だけではなく、その土地の「真の豊かさ」や「人々の営み」に触れることを通じて、自身の生き方を見つめ直す機会を提供できるかが、今後は問われるのかもしれない。

 能登の未来に光を観る新しい「観光」の形が、地域の活性化へとつながっていくことを願いながら、私自身もその一助となれるよう、今後もできることを続けていきたい。


新井氏

 
 
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